突然ですが、今流行りの、

雪の女王になりました。





氷の国から。





「・・・・・・・・・・・・おっふ」





いや、待て。

いろいろ待とうか。

いや、待ってくださいお願いしますと、土下座しようとして頭が重くて転んだ事が走馬灯の様に脳内を駆け巡る。

今日が戴冠式なんて、どんな冗談だ。

真夏の空の青さと海の輝きが目に刺さる。

いらっとした瞬間、私の心に呼応して雪の欠片が舞い散った。

映画と同じく魔法の力も健在だ。




「・・・・・・・・・・・・マジかぁ」




いや、むしろ。

いや、そもそも。

何故、雪の女王。

何故、成り代わり。

いつ死んだし私!!!!

そう自問自答して二十年たつということだ。

王座に掲げる練習用の玉か槍か何かがキラリと光る。

手袋を取ってひらりと雪を遊ばせると雪の風に乗って二つがふわりと浮いた。

いや、ある程度のコントロールは出来るんだよ。





遊び倒したから。





原作通り妹に当たっちゃったけど。

だって妹可愛いんだもん。

おねだりされちゃったんだもん。

原作通り会うなって言われちゃったけど、こっそり会って遊んでたよ。

だって妹可愛いんだもん。

おねだりされちゃったんだもん。




「・・・・・・・・・・・・ちくそー」




力のコントロールでもなく、人前に出ることでもなく何にこんなに悔しがってるかって?




「うちの妹が嫁に行くなんて嘘だ」




あの海老フライもみ上げ野郎をどう始末してくれよう。

婚約宣言なんて聞きたくないお姉ちゃんの気持ちをわかってほしい。




※※※※※





「あのね、あたしたちけっこ、」

「駄目」





言わせねぇよ?





 


氷の国から。





愛する妹からの婚約宣言は思ったより衝撃が大きかった。

思わずパーティー会場で暴走するくらいには。

おかしい。

一人で寂しくないようにお姉ちゃん一緒にいたのに。

何であんな海老フライ野郎に隙をつかれたか我がスイートシスター。

やっぱりとーちゃんとかーちゃんが早く死んだのがいけなかったのかな。

一応王族だし、魔法を隠してるから外交しないし、友だちいないしな。

でもそもそもあの海老フライが!




「ていっ!」




苛立ちのまま不必要な手袋を投げ捨てマントを取る。

城が大騒ぎになったせいでつい逃げてきたけど行く宛なんてない。

つい山を登ってきたけど完全に雪山になってしまった。

完全に原作通りでがっかりする。




「・・・・まあ、いいか」




がっかりついでに城でも作っておこう。

雪だるまも作っといた方がいいんだろうか、妹のために。





世界は妹で回っている。




何か文句でも?




※※※※※




妹来たなう。





氷の国から。





「あのね、その、」

「うん?」

「あたし、お茶をしに来たわけじゃなくて、」




あ、もちろんお茶は美味しいし嬉しいんだけど!と言葉を続ける妹の愛らしさにノックアウト。

このこのまま時が止まればいい。

氷のお城で氷のテラスに氷のテーブルとティーカップでティータイム。

氷属性な私は寒さを感じにくいがこの子は大丈夫なんだろうか?

ドレスも可愛かったけどこの冬服可愛い。何コレ天使?

うふふふ〜と見つめていると妹は少し居心地が悪そうにもぞもぞと動いた。




「・・・・国中が、雪と氷に包まれたの。お願い、元に戻して!」

「無理よ。やり方知らないもの」

「・・・・え!!?」




この無鉄砲なところが可愛いんだよなあ。

私を信じて疑わないところとか。




「本当よ」




だってここまで暴走させたことなんてない。

原作じゃ真実の愛でなんて言っていたが、何よ、真実の愛て。

そうよ、愛よ!なんて物分かり良くいくもんですか。

そもそも私の心の傷はまだ癒えていない。

海老フライはもちろん、




「アナ!!大丈夫か!?」

「クリスト、」

「・・・・・・・・・・・・だぁれ?その男・・・・?」




妹に近付く男はみんな敵。




実は雪だるまも気に入らない。




※※※※※




いかんいかん、私としたことが。




氷の国から。




トナカイ野郎を見てからの記憶があまりない。

やっちゃった。

やっちゃったよ私。

蜂のダンス並にうろうろと氷の城を歩き回る。

妹には酷いことしてないと思うけど、男を放り出したのにきっと巻き込んだ。

まずい。

自己嫌悪と罪悪感が心を埋める。

ヤバイやつだ。

どくん、どくん、と耳鳴りがする。

本当に、

周りの氷の壁が心音に呼応して赤く染まる。

このままじゃいけない。

この後の展開を思い出しても、悪い方しが思い浮かばない。

このままじゃ本気で一人か二人は手にかけそうだ。

だってこの後来るのは因縁の相手、




「女王!冬を終わらせるんだ!」

「・・・・誰に向かって口を聞いている、小童が・・・・」




これじゃ雪の女王じゃなくて雪の魔王だ。




氷の城に阿鼻叫喚が響いた。




※※※※※





やっちゃった。

あんまりにあんまりなので二度言います。

やっちゃったよ私。





氷の国から。





これはもう言い分けが出来ない。

自身の城の牢に入れられるとか恥ずかしいにも程がある。

海老フライ一同をぼっこぼこにしたはいいが力を使いすぎて気を失うとか穴があったら入りたい。

頭を抱えると硬く冷たい鉄が頭に当たる。

痛い。

これを海老フライ野郎に付けられたかと思うとギシリと歯が鳴る。

そのおかげで今までできていたコントロールが甘くなり手につけられた鉄に、牢の壁に氷が走る。

このままじゃいけない。

妹の無事を確めなくては。

原作通り言っていれば彼女の胸に氷が刺さってしまったかもしれない。

あの子が凍るなんて、ダメ、絶対。

本当に治る保証なんてない。

愛を知るとか、真実の愛とか、何さ何さ!

そんな不確かな物にあの子の命をかけられるものですか!

窓の外では私の焦りを現すかのように激しい吹雪が吹き荒れている。




「・・・・・・っ!」




海老フライでも誰でもいい、




「・・・・誰か、」




あの子の様子が知りたいだけなのに、




「・・・・・・・・お願い、だから、」




がちゃがちゃがちゃ!




「・・・・っ!」




扉ではない。

吹雪が吹き荒れる窓の外。




「・・・・・・、誰?」




見かけない、シルエット。




「はぁい!アナ、いるー?僕だよー!」
 





ぎゅーっと抱き締めて!




思わず点になった目の先には動く雪だるま。

あ、うん、作った、けど、あれ?何でここに?




※※※※※





「あれー??人違い??」

「・・・・あ、うん、そうね」

「あ!もしかして部屋を間違えちゃったりした?」

「・・・・あ、うん、そうね」

「あ、ぼくオラフ〜!」

「・・・・あ、うん、そうね」




作ったの私だからね。

って、私から出来たものがなんでここまで会話が難しいのかしら?




氷の国から。




「じゃあねぇ〜!」

「あ、あ、ちょっと待って!」




あまりのテンポの違いに思わず流されるところだった。

危ない危ない。




「あなた、妹と一緒にいたわよね!あの子はどうしてるの?」

「アナー?アナは今ハンスにキスを」

「あのクソ海老フライ野郎があの子に触るとか死刑以外の何物でもないわね。極刑決定。やるか」





バキッと手元でいい音がしたと思ったら鉄が割れていた。

ナイス私。




「君はアナを愛しているんだね」




そのまま窓から飛び出そうとした私を止めたのはしみじみとした雪だるまの一言だった。

ふと思い返す妹の表情。




「・・・・・・・・あの子に、愛の何が分かるのって言われちゃったわ」




あの海老フライ野郎を愛してるって。

あんなに一緒にいたのにな。




「・・・・・・・・あの子に、」




ぽつりと胸に波紋が広がる。

本当の雪の女王じゃない私にとって、

必要なのはあの子だけで、




「・・・・・・・・妹に、」




パタパタと軽い音が耳に響く。

広い世界なんて必要じゃなかった。

大人になんてなりたくなかった。

女王なんてなりたくなかった。

彼女以外なんていらなかった。

ただ、

ただ、




「きらわれちゃったらどうしよう・・・・?」




頬を汚す涙が熱くて冷たい。

私が彼女に依存していただけで、

彼女の世界を狭めていたのは私。

彼女を城に閉じ込めていたのは私。

私には、あの子しかなかったから。

なんて馬鹿な私。 




「君は本当にアナが大好きなんだね」




固い木の枝がそっと頬の水分を拭う。




「大丈夫、真実の愛をぼくは知ってるからね!」




僕を作った君なら大丈夫さ!

そう笑った雪だるまはとても頼もしく見えて、





今こそ、ありのままの、と歌うときかも知れない。




謝ってくるわ!そう飛び出した窓を振り替えるとご機嫌な雪だるまはもう見えなかった。







※※※※※







氷の上で会いたくもない海老フライ野郎と出会った。

お呼びじゃねーのよ、と突き放すはずが、



「アナは死んだ!君の氷が胸に刺さり氷になって死んだんだ!」



言葉が胸に突き刺さる。

辺りの吹雪がやむ。

ああ、



「そう、」



もし、

本当にそうなのだとしたら、



「世界を氷で包んでしまおうかしら?」



なんてね。







氷の国から。







「なっ!!?」



小さく呟いたその言葉は以外と響いたらしい。

目の前の海老フライが顔色を変えた。

それは決して恐怖や怒りではない。

興奮だ。

己の正義と地位を手に入れたと錯覚した実に愚かな男の。



「そんな事はさせるものか!アナにこの国を任された俺が」



シュンッ



「その汚い口を閉じなさい」



指先から放たれた氷の粒が海老フライ野郎の頬を浅く切り裂く。



「っ、貴女は、」



シュンッ



反対の頬を切り裂いてやっと静かになった。



「サザンアイルズ国のハンス王子、だったわね」



返事を待つつもりはない。

氷を警戒して口を開かない男ににっこりと微笑んだ。



「十三番目の王子はさぞかし大変だったでしょうね?」

「っ!!」



そこで初めて顔色が変わった男に更に笑みを深くした。



「出来の良いお兄様たちにかまけて自分を見てくれない両親。寂しくて寂しくて自分を見てくれる人を探そうとする」



そこまで言って邪気なく笑った。



「ああ、違うわね。お兄様より自分の方が出来ると思ってるのね。だから王位を狙ってこの国に来た。私に取り入るつもりがあの子が引っ掛かったものだから、そのままあの子を殺して私も始末してこの国を乗っ取るつもりだった」



王位なんて面倒な事この上ない。

誰が望んでこんなもの手にするか。

それでも王位なぞなくとも国に尽くす事も出来るだろうに。

それをしないこの男。

勿論、それ相応の苦労があったはずだ。

そして自国に見切りをつけて他に手を伸ばす。

この男。

ああ、 

本来、この女王が決してしないであろう笑みで顔を歪ませた。



「小さな男」

「っ!!!言いがかりだ!そもそもアナを殺したのは君だ!彼女の胸に氷の刃を突き立てた!」

「では、あの子の亡骸をここへ」



ざわりと空気が揺れた。



「この男の他に、あの子の亡骸を見た者は?」



ちらりと視線を城のバルコニーに立つ大臣たちに送るとおろおろと他の大臣の顔を見比べている。

役立たずが。

後で全員降格だわ。



「では、誰かあの子とこの男が最後に出会った部屋へ」

「っ!」

「あの子を救う手立てを講じず、部屋に鍵をかけて捨て置いたのだとしたら、」

「馬鹿な!!何を、そんなっ!」



顔色を変え、唾を飛ばしながら怒鳴る男を冷めた目で見つめる。



「我が国への宣戦布告と理解する」

「っ!!!」



ふわりと足元から雪が舞い上がり髪に絡まり指先に触る。



「あらあら、大変ね。サザンアイルズの国王はなんと言うかしら?」



飛びきりの微笑みはお気に召さなかったようだ。

血走った目で剣の柄を握る男を鼻で笑う。



「っっっ!!!貴様っ!殺してやる!」

「こっちの台詞よ。ゲス野郎」



腕を伸ばし手に力を集める。

氷が胸に刺さる?

そんな甘いことですむと思わない事だ。

思いきり力を振るおうとしたその瞬間。



「ダメーーーーーーーー!!!!!」



聞き間違うはずのない声が響いた。





※※※※※





これが夢なら覚めてほしい。

何度も何度も繰り返し見た、風景。

彼女を大切に思えば思うほど、

重くのし掛かる未来の記憶。




「アナ・・・・?」




最後の吐息と共に、

彼女の鼓動は動きを止めた。





雪の国から。




何度も見た。

生前は映画館で、

テレビで、

DVDで、




「っ、ねぇ、」




何度も見た。

夢で、

悪夢で、

どう足掻いても変わらないこの世界の理。

気を付けても、頭に当たった魔法。

仲良くしてても、死んだ両親。

魔法を使いこなせても、暴走する力。




「うそ、でしょう?」




手を伸ばし、氷像となった妹。

私を守るように、




「っ、」




吹き飛ばされた男。

駆けつけた男、雪だるま。

悲しみの視線を送る臣下たち。

そして、




「アナ、」




間に合わなかった、私。




「ぃ、ゃ、」




怒りか悲しみが慟哭か、嘔吐しそうなほど激しい感情が体を駆け巡る。

暑くて、寒い。

収まった吹雪がジリジリと脳内を満たす。

力が溢れ出ようと喉の奥を叩く。




「ぁ、」 




這いずりながら彼女の頬に触れた指先が酷く冷たい。

この生を生きて二十年、

寒いなんて思ったことなかったのに。

冷たいなんて感じたこともなかったのに。




「ねぇ、お願い、お願いよ・・・・」




硬い頬に触れる。

冷たくて冷たくて、手が焼けそうに痛い。

涙が出ない。

この世界の理がそんなにも強いものなら、

真実の愛が氷を溶かすのなら、




「お願い、」




たった二人の家族なの。

お願いだから、




「連れていかないで」




愛なんて知らない。

私を満たすのは所詮、自己愛、偽善、欺瞞、正論、愚痴、の汚い何か。

神様なんて嫌い。

呪えるものなら呪っている。

この生命を与えたあなたを、

この感情を与えたあなたを、




「あいしているの」




血を吐くような小さな呟きは、




「あ、れ?」




沢山の歓声と、溶けてゆく氷に混ざり、





「アナ!!」




失われた夏の風と共に、頬を撫でる。




「ほら、ね?大丈夫だって言ったでしょ?」




世界はとても理不尽だ。

顔を歪ませどうにかこうにか笑顔を作った私から、

ボタボタと間の悪い涙が頬を汚し、




「エルサ!!」




暖かな鼓動が私の冷たい胸を打つ。




「真実の愛はいつも君の元にあるんだ」




君が望む望まないに関わらずね。

そう得意気に言って木の枝がとても器用に涙を拭った。

本当に凍っていたのは私の心だったのかもしれない。

そんなセンチメンタルになるほどには、

今、

この空間はとても大団円だった。







エンドロールは流れない。




何故ならこれは、

映画でもテレビでもDVDでもなく、

唯一無二の、

私の生きる現実だから。




※※※※※




「国民の中には今回の事で不安に思う者もいると思う」




 立つ。


 真っ直ぐに。




 「それでも私と共に在ろうと思ってくれるなら私は最善を尽くしたい。亡き前王と王妃の為にも、愛しい我が妹アナ王女の為にも、何よりこの国を愛すあなた達と共に、このアレンデールを愛し慈しむと誓う」




 怒りも不安も、


 期待も依存も、


 喜びも幸せも、


 悲しみも苦しみも、




 「これをもって、エルサ・アレンデールの誓いとする!!」




 歓声と紙吹雪、


そして真夏に粉雪を遊ばせて、


 戴冠式お披露目が終了した。




 雪の国から




「エルサ!!」




お披露目が終わった直後バルコニーから室内に戻ると、街娘のような服装で抱き着いてきた妹をきゅっと抱き締め返す。

少し前まで同じく正装していたはずなのにこの子には窮屈過ぎたのだろう。

こらっと少し諌めるとちらっと舌を出してはにかんだアナにノックアウト。

姉さん、そーゆーのに弱いってバレてるのかしら?




「とっても素敵だったわ!!格好いいし美人だし!!自慢の姉よ!!」

「貴女だって可愛くてチャーミングで可憐で頑張り屋さんでとにかく可愛くて、自慢の妹だわ」




大好きよ、と額にキスを贈ると林檎のように頬を染めわたわたとする妹が可愛らしすぎて独占欲が留まる事を知らない。

でも、




「ねぇ、この格好、おかしくない?髪型とか、その、おろした方がいいかしら?」




そわそわと恋する乙女のこの天使が、トナカイ野郎の毒牙にかかるかと思うと歯ぎしりし過ぎて血を吐きそうだ。




 「大丈夫、おかしいところなんてないわ。百点満点を超えるぐらいよ」

 「エルサのは身内の欲目だもの」




唇を尖らす彼女を思わずもみくちゃにしそうになって自重する。

その代わり細かな花の飾りを雪で作り、髪にさす。




 「あ、」

 「これで、二百点満点かしら?」

 「ありがとう!エルサ!!」




もう一度、きゅっとハグをして妖精のような妹は軽やかに走っていった。

その先にいるのがトナカイ野郎とか、と思えば思うほどそのうち奥歯が折れるかもしれない。




 「いーの?行かせて」




突然声が聞こえた。

ここには誰もいない。

臣下たちも皆仕事を与えてあるし、メイドたちは祝いの準備で忙しい。

そもそも女王である私にこんな気の抜けた声で話しかけるのは一人、いや、一体しかいない。




「何でここに居るの雪だるま」

「オラフって呼んでよ〜!」

 「はいはい、オラフオラフ」




突如現れた雪だるまに動じることなく窓際に腰かける。

眼下には祭りを楽しむ人々。

その中で雪の飾りを髪につけて走る愛し子が見える。




 「アナの側にいたいんでしょう?」

 「いるわよ、あの子の側に。たった二人の家族だもの」




これ以上強い絆はない。

かけがえのない絆を私は持っている。

だから、




「いいのよ」




これからは、彼女の物語で、




「私も真っ直ぐ立たなくちゃ」




これからは、私の物語なのだ。

さほど魅力を感じない女王業もやるからには極めたい。

自然を潰してまで発展させる気はないがあのクソ海老フライやちっさいオッサンのような他国からはこの国を守らなくては。

今後、雪の女王がいるこの国に手を出してくる馬鹿がいるとは思えないがゼロとは限らない。

優しくも浅ましい、それが人間なのだ。

この国を守り、愛す。

それは全て、




「あの子の為に」




世界は彼女で廻ってる。

それは私のモットーだ。

あの子を愛するように、この国を愛そう。




「大丈夫だよ」




雪雲をまといながらお気楽に雪だるまが踊る。




「君は愛されている。みんなからも、世界からも」

「何?お世辞なんて雪だるまには似合わないわよ」




振り返ると思ったより近くでつぶらな瞳と視線がぶつかった。

くるくると感情豊かなこの雪だるまが、何故か似合わない大人びな表情でこちらを見つめていた。




「後は君が自分を愛すだけだ」

「っ、」




息を飲む。

巡る、様々な想い。

怒りも不安も、

期待も依存も、

喜びも幸せも、

悲しみも苦しみも、

全て、この道に繋がっている。




「大丈夫よ、」




目を閉じて、ゆっくりと目蓋を開ける。

世界を、見る。




「私も、私を愛しているわ」




この世界に生まれた、大切な私だから。

私だから、出来ないこともある。

でも、

私だから、出来ることがある。

そう、







「アレンデールの雪の女王をなめてもらっちゃ困るわ」




まずは世界平和でも目指してやるわ!
全ては妹の為に!!







これにてエンディングです。
こっそり連載お付き合いありがとうございました!

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