「ねぇ、」

「え、あ、な、なんだってばよ・・・・?」




夕闇迫る公園で、初めて君に声をかけた。

それは私の決意にも似た何か。




「ちょーヤバいぶらんこの乗り方教えてあげようか?」

「へ?」

「ふははは!この私を捕まえられたら君に伝説のちょースーパーデンジャーな技を伝授しようっ!!」




のちに彼は語る。




ってばメチャクチャいい笑顔で、ゲキ眉先生みたいだったってばよ!」

「何さ、楽しかったでしょ?」

「楽しかったけどかなりデンジャーだったてば!」

「遊びとは、命がけよ・・・・!」

「あ、またどっかいってるってばよ」













「やべ!」




みんなが和議がどうのこうのと言っていて、

特にウキウキしてるポニーさんとは正反対でダークサイドに堕ちかけているへそさんがいた。

私の目にはどう見ても戦の準備してるようにしか見えないんですけどその辺どうですか?とか思っていたら、




さん?」

「ごめん私逃げる!じゃなくて、へそさんとこ行ってくるからごめん後よろしく!!」




神子は大丈夫、今はぱっくんされないから!

さん!?という神子様の呼び声を無視し瞬身で姿を消した。

いやいやいやいやいや、ヤツがくるから!

ラスボス来ちゃうから!

この距離で円を使わずとも届くプレッシャーに相手の驚異がうかがい知れる。

いや、相手神様だもの。

神子はいいよ、白龍という龍神様付きだから。

こちらはただの異邦人なのだ。

下手したらそこらのモブと同じで気付いたら魂吸われてるとか冗談じゃない。




「へそさん、みっけ」




人や人でないものが集まっている辺りに適度に突っ込んで適当に色々あしらっていると、妙に囲まれている人を発見した。

やっぱり目立つのか相変わらずの緑のツンツン頭と眩しいおへそ。

ねぇ、いつも思うけどそれって防御力的にどうなの?




ちゃん!」

「へい、素敵な助っ人 ちゃんの登場でござい♪」




軽口を叩きながらクナイで辺りの敵を一掃する。

人じゃないものには思いっきり。

人はちょっと可哀想なので一日は軽く目が覚めなさそうな打撃を与えておく。

甘いんだろうけど、私の戦じゃない。

全力で殲滅しようものなら原作どころではなく歴史が変わる。

平家にも源氏にも興味はない。

どっちが勝ってもどっちでもいい。

私の興味は、今も昔もひとつだけ。

大切なものは必ず守る。




ちゃん、どうしてここに、」

「言ったデショ?」




怨霊をクナイでいなし、起爆符で吹き飛ばす。

所々で悲鳴が上がる。

神子たちが来るまでの時間稼ぎにちょうどいい。

件の念は使わない。

源頼朝に繋がるへそさんの前で手の内を見せるのはぱっくんの可能性が上がるから、というのも勿論あるが、

純粋に恥ずかしい。

オタクは秘して隠されるべき存在だと信じてる。




「ワタシ強いんですって」




すたんっとへそさんの前に立った時には周りに動いているものはいなかった。

うーん、間違えて仲間までやってないよね?多少不安が残る。




ちゃん!怪我はない!?こんな、こんなとこに単身乗り込んでくるなんて、無茶だよ!!」




しばらくポカンとしてたへそさんがようやく機能を取り戻したのか、突然ガシッと肩を捕まれた。

今の戦闘見てなかったのかこの人。

いつまでもここに残っていて仕方がない。

へそさんとの部隊の皆さんの所もまた適度に一掃でもしてこよう。




「大丈夫デスよ、それより、」

「大丈夫じゃないっ!!」




怒鳴られた。

滅多ことじゃ声を荒げる事のないこの人に。

思わず目をぱちくりと瞬かす。




「・・・・大丈夫じゃないよ、頼むから、こんな危ないことしないでよ・・・・」




大きな男の人が私に向かって請うように、すがるように肩に頭を押し付けた。

大きな手のひらから、

押し付けられた額から、

彼の震えが伝わる。

ああ、なんて、




「俺なんかのために、」





馬鹿な人。




「頼むから、」




ごちん!




「あいた!」




右側頭部がジンジンします。

加減したのでへそさんの右側頭部は陥没してない。

私はジンジンする程度だが、へそさんはおそらく目の前に星が飛んだことだろう。

結構な衝撃だったのか、私の肩口に頭を預けていたせいで座ることも出来ず頭を抱えている。

それってまるで私を抱き締める構図になっているんですが、へそさん、絶対気付いてませんね?




「馬鹿なこと言うもんじゃありませんよ、全く」




大丈夫なのかこの人。

呆れてしまう。

この男にも、自分にも。




「わ、わわわ! 、ちゃん?」




なんて面倒くさいんだろう。

肩口で喚く男を無視して髪をかき回すように乱暴に撫でる。




「私はね、出来ることしかしません。無茶をしてるのは景時さんでしょう」

「っ、」




スパイの事そうだが、この布陣だって自分が囮になって敵を集めて、無茶にも程がある。

ラスボスと神子と親友の事で自棄になってるのは分かるけど、自殺志願者じゃあるまいし。

いや、この状況から逃げられるのならいっそ殺してくれと、

そう思っているのかもしれないけれど、




「助けますよ。あんたが嫌がってもね」

、ちゃん、」




決めたから。

どんなに面倒でも、大変でも、

歴史が変わろうが、世界が変わろうが、

助けると決めた。

体も、心も、周りも、全部。




「言ったデショ?」




梶原景時が、彼らしく生きていけるように。

その為になら、ラスボスとだって一戦交えてやりますよ。




「ワタシ強いんですよって」




もちろん、彼自身とも。

彼が本当に戦わなきゃいけないのは、

源頼朝でも、神様でもない。 

弱く卑怯な自分自身。




「一緒に戦いますヨ。守られるのは性に合わないんでネ」




戦いますよ、あんたと一緒に。




「・・・・・・・・ありがとう、」

「・・・・何してるんですか、二人とも」




その後、抱き合ってる我々を、援軍としとて来た神子一行に白い目で見られたのは、立派な笑い話だと思う。




「「え!!??別に何も!!??」」

久しぶりの更新です。

いけるとこまでいってみます!




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