某下忍時代、
「で、は誰が好きなの?」
「サスケ君じゃないわよね!?」
「あ・・・・、ナルト、くん?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・えー」
「今日こそは逃がさないわよ!」
「で?で?でっ!?」
「教えて、ほしい、な、」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・本当は引かれているのに素直になれず悪態をつくイルカ先生と、そんな事はまるっと分かってでも初めての本気の恋に戸惑いつつ猛アタックを繰り返すカカシ先生、そんなカカイルが好き」
「「「・・・・え゛?」」」
「もしくは、両想い片想いで気になるけどムカつくもどかしい喧嘩っぷる状態サスナルが、」
「ってぎゃー何言ってのよバカ!?(しゃーんなろー!)」
「ちょ!ヒナタが倒れたわよ!!」
「ヒナター!!?」
その後、物凄い勢いで下忍に腐女子が増えたのは、別に私のせいじゃない、と思う。
トリップ×3
「さんは景時さんのどこが好きなんですかっ?」
「というか、本当に兄上でいいの?」
かっぽーん、といい効果音が響く露天風呂。
順調且つ知らない間に赤毛スパッツのお頭殿が仲間になり、
暑さに負けつつ熊野水軍へ協力を頼みに行く道すがら、
幼なじみの還り内府殿が合流し、ばっちりしっかり八葉がそろった。
目立つこと山の如し。
どこのツアコンだ。
「ねぇねぇさんってば!」
「・・・・う〜ん?」
あえて意識を遠くに飛ばす作戦は容赦ない神子殿の勢いに吹き飛ばされました。
蛍を見ながら大変風情があり心も体も癒されるはずが、乙女ならぬ神子たちの恋バナ視線が痛い。
何でこんなにウキウキしてるの君たち。
「いや、あの、ですね?」
「夜中に景時さんとお茶してるの知ってるんですからね〜」
「まあ!兄上ったら!」
あの害はないが妙にウキウキした視線は君かね望美君!
きゃーって言うな二人して!
黒龍の神子殿もそうやっていると普通の女子と変わりない。
何でそんなに他人の恋バナ好きなの二人共。
思わずため息が出る。
二人の若さにオバサンついていけないわ、見た目二十歳前だけど。
あれ以来何気にヘソ氏とは茶飲み友達だ。
というか恐らく暗殺こなしてだだ凹みのヘソ氏とか、嫌な依頼されてだだ凹みのヘソ氏を眺めながら白湯を飲むのが定番になったというか、
ごくたまに吐き出される弱音とか私の能力への探りとかしか会話がないので甘味系は皆無なのだが、
「ねぇねぇねぇ!さん!」
「さささ、殿」
言っても無駄ですね?分かります。
「・・・・どろん」
「逃げた!!」
そんなこんなで熊野への旅路は過ぎていくのである。
過ぎていった思った私が甘かった。
彼女らは私が油断するのを待っていたのだ。
「歩き難いです望美サン」
「いってらっしゃいさん!」
「あの、朔・・・・?」
「いってらっしゃい兄上」
神子ーズの笑顔が眩し過ぎる。
白龍の神子のサムズアップが最早目に痛い。
熊野でだらだらと涼んでいたら部屋に連れ込まれ、めちゃくちゃおめかしされてヘソ氏と共に熊野の街に放り出されました。
あれ、このイベント君のだろう望美君。
「ちゃん、ごめんね朔が・・・・」
「大丈夫ですヨ、せっかくなんで色々見ましょうか?」
情けない顔をしていたヘソ氏も気を取り直して二人で熊野の市を見て回る。
久しぶりに着た着物の歩き難い事歩き難い事。
いつもパーカージーパンで目立ちそうな時は変化と幻覚で誤魔化してるバチが当たりましたか。
隣を見れば相変わらずヘソ氏はおへそが眩しい。
これが正装の源氏って一体・・・・
「あ、ちゃんここ寄ってもいいかな?」
と示した店は怪しい薬剤店。
「あ、ダメなら!」
「いえ、ナイスです景時殿」
「ないす?」
小首を傾げる萌え三十路前を急かし店に入る。
きっと女子と入る店としてはまず間違いなく振られるチョイスだが、私的には大変ありがたい。
そろそろ色々補充しなきゃと思っていたのだ。
兵丸薬など諸々の薬は当然だが使えばなくなる。
山で取れる似たような薬草で代用していたがそろそろ限界だったのだ。
こちらの薬も気になるし、起爆符も作りたい。
「欲しいものあったら言ってね」
ウキウキと薬を手に取った私を妙に微笑ましそうに見るヘソ氏。
文無しは確かなのでありがたいのだが、私が手に持っているのはアレとコレとソレを混ぜると一匙で神経性の猛毒になるものですが、それでも微笑ましいですかね?
「ん?」
一通り店内を見て、なかなかの掘り出し物にウハウハしていると景時が真剣に何かを見比べている。
「何見てるんです?」
「わ!ちゃんっ!?」
後ろがら空きですよ軍師殿。
手に持っているのは火薬。
「爆弾でも作るんですか?」
「いやいや!そんな物騒な物じゃなくてさ!」
思わず自分の買い物かごに目をやる。
物騒な物ばっかり持っててすみません。
「何かこれで綺麗な花みたいなのを・・・・」
「花火イベントですね、分かります」
「はなび、いべんと?」
萌え三十路前を無視し、棚の薬を見る。
なるほどなるほど。
「じゃあ、これとか混ぜると楽しいと思います」
「え?これ?」
「そうすると色が途中で変わるんですよ」
「へぇ!あ、今これを使ってこんな感じにしたいんだけど、」
「ふんふん、じゃあこんなのは?」
「すごい!ちゃんすごいよ!」
私、これでも優等生ですから。
そんなこんなで久しぶりにアカデミーでの優等生っぷり(座学に限る)を発揮していたらあっという間に日が暮れた。
「ごめん、もっと他のところ回れば良かったよね・・・・」
日が暮れれば女子の好むお店も閉まる。
今や夜の繁華街と化した熊野の街を歩きながらショボくれた景時さんと歩く。
いやいや、
「めちゃくちゃ助かりましたヨ?」
事実欲しかった薬草の類いは大体手に入った。
え?薬草ならフード氏に貰えって?
そんな事してあの笑顔と半日以上の押し問答は御免被る。
「俺の趣味に付き合わせちゃったし、」
「楽しかったですネ〜久しぶりに血が騒ぎました」
「買い物も・・・・」
「もう十分買っていただきましたが?」
何故かマジマジとヘソ氏がこちらを見つめる。
「・・・・ちゃんって、」
「はい?」
「変わってるね」
「それは流石に失礼です」
ごめんごめんと笑いながら謝られても誠意は見えませんよ、ヘタレ軍師めが。
「ちゃん、あのさ、」
そろそろ屋敷が見えてくるな、といったところで景時さんが立ち止まる。
はい?と振り返ると頬をかきながらはにかむ三十路手前ヘソ男子。
月が彼を照らす。
「これ、良かったら貰ってくれる?」
手にしているのはちりめんの小さな袋。
香る梅の香り。
「遅くなっちゃったけど、前、助けてもらったお礼」
こんな事しかできなくてあれだけど、と照れ笑いをする彼。
「・・・・私が、貰っていいんですか?」
「もちろん!ちゃんのために作ったんだ」
「・・・・ありがとうございます」
「あ!お香苦手だった!?」
「いえ、忍、香り付けちゃダメだけど大丈夫です」
それって大丈夫じゃないじゃ!と騒ぐヘソ殿から香り袋を受け取り香りを吸い込む。
爽やかな、梅、甘い、香り。
「ちゃん?」
「少し、覚悟を決めたところです」
「え?」
「月が、綺麗ですね。景時さん」
「え?うん、明日満月かな?」
そんな他愛ない会話をしながら家路に就く。
「ええ、本当に。月が綺麗ですね」
ちょっと私、本気になりますから。
「あ、それと、」
「なんです?」
「その着物、ちゃんによく似合ってる、よ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・ありがとうごじゃいます」