自分が生まれたと知った新生児期、
(輪廻転生ってホントにあるんだあ)
と、のんきにおにゅーな母親の乳をイヤイヤ吸っていた。
ある程度大きくなって、視力が人並みになり遠くまで見えるようになった幼児期、
「・・・・」
そびえ立つ火影岩、
一昔前の商店街、
額宛を着けて歩く人々、
飛ぶ、消える、たまに増える。
「うっそーん」
この日から、私の修行漬けの日々が始まった。
天才、神童、ふざけんな!全部努力の賜物じゃぼけぇ!!
トリップ×3
ビフォーアフターを目指して数日。
やっと落ち着いた夜を過ごせるようになり、ゆっくりと夜風に当たっていた。
ここまでくるのはそれなりに面倒だった。
乱暴に全てを一掃すれば我が身が危ない。
とにかく自身の安眠が得られれば良いわけで。
ということで、細かく細かく結界と幻術をほどこしまくった。
過去、某銀髪上忍に、
「ってそーゆーとこめちゃくちゃ細かいのネ。いや、ダメじゃないよ?ただなんてゆーの?その完成度とチャクラコントロール、ちょっとキモイよね」
とまで言わしめた結界と幻術。
ただ、結界をはっただけじゃ何かあると主張するようなものだ。
幻術も同じ。
バレては意味がないのだ。
解けない幻術は写輪眼のうちはには勝てない。
解けない、のではなく、気付かない幻術を。
すなわち、いつでも監視、気配を気にせず眠れる環境を!!だ。
狐っ子と仲良くなってからチラチラと監視が付き、無駄に修行したおかげで気配に敏感になった私は眠れぬ夜を過ごした。
結果、特化したのが結界と幻術だ。
戦闘で使えなくもないが、私の好み的には、ゆっくりじっくりじわじわ掛けるのが得意だ。
まるで、最初から何もなかったようにゆっくりと意識を侵食していく。
性格悪い?百も承知だ。
「ホント隠行向きだーねは」
びっくりするぐらい体力ないけどネ、と言われたあの頃が懐かしい。
今はどっかの変態共三人衆のおかけで死ぬほど体力ついたけどね。
閑話休題、その十八番をこの数日かけてゆっくりじっくりじわじわ掛けて、悪意あるもの、害あるものは近付けないようになっている。
もし誰かが気付いてもこれも神子様の力!とか思ってくれるように細工もちらほら。
え?スケープゴートじゃないヨー。
「あれ?ヘソさん?」
そんな夜を楽しんでいた一時、引っ掛かる弱々しい気配がひとつ。
弱々しい。
怪我とかじゃないようだが酷く弱々しい。
気配は井戸の方へ向かって行った。
「・・・・お節介、だとは思うけどネ」
少しだけ考えて、手拭いと白湯を用意して気配の元へ向かった。
「・・・・っ!」
そこには案の定、半泣きで頭を水に突っ込むヘソ氏がいた。
ナニがあったか知らないが、
「風邪引くヨー」
「っ 、ちゃん・・・・どうし、あ、起こしちゃ、った?」
取り繕う様が痛々しい。
再三言うが分かるって。
私忍でハンターよ?
「いんや、起きてました」
濡れた頭に手拭いを放り、縁側に座るように手招きする。
「あ、えっ、と」
戸惑うヘソ氏にめげずてしてしと横を叩き続けるとおずおずと近付いてきた。
座るまでには至らない。
「白湯、飲みません?」
「いや、濡れちゃうし、さ」
「分かりました」
ちょっと目をつぶって息とめて下さい、と指示をし印を組む。
「え?あのちゃん?」
「ちょっと熱いですよ」
と言って火遁の術を解放する。
「わ!!あっ!つ、い・・・・?」
「乾いたデショ」
「すごい!」
凄くも何ともない。
属性変化の中で一番相性の悪かった火を使うとこうなるだけだ。
つまり火遁の出来損ない。
それがなかなかどうして大変使い勝手がいいのでこうして家事的な意味で活用している。
風遁とかも洗濯乾いていいよね!え?所帯染みてる?はい知ってます。
「陰陽師、じゃないし、君は、一体・・・・?」
「忍です」
言ってませんでしたっけ?と見るとぽかんとしているヘソ氏。
何その顔可愛、いや、前髪降りてて可愛いす、ちょっと落ち着こう私。
「しのびって間者とか烏のことでしょ?えちゃん烏?でもこんな技を使えるって・・・・」
脳内がお花畑になっている間にヘソ氏はヘソ氏でパニックを起こしているようだ。
「・・・・あのさ、他に、どんな事ができるの、かなーなんて」
ヘソ氏、顔がネガティブってますよ。
「・・・・無理、だよね?」
「とりあえず座んなさいな」
未だ突っ立ったままのヘソ氏を強引に座らせ白湯を持たせる。
そしてゆっくりと印を組んだ。
「ちゃん?」
神子一行に突然現れた八葉でない異分子として探りを入れらているのだろう。
そしてこの情報はまず間違いなくラスボスの耳に入る。
梶原景時は源頼朝の忠実な犬だ。
忠実、は言い過ぎかもしれないが、結局のところ逆らえないのだから十分忠実だ。
「まあ、こんなのとかね」
「え?・・・・桜っ!?」
夜空に季節外れの桜が舞う。
「幻術ですヨ〜」
本当は忍が手の内を見せるなんてあり得ない。
忍べてない忍は大勢いるしビンゴブックなんてあって、おまいら情報筒抜けかよ!と突っ込んだもんだが、普通手の内なんて絶対見せない、ダメ、絶対。
「・・・・いいの?俺なんかに教えちゃって、」
あんたの事なんて全然信用してないんだからみたいな態度の方が二重スパイの彼には楽かもしれない。
信用してるよなんて彼には酷だろう。
「うん、」
でもそれは、ぶっちゃけ自業自得だ。
そんな風にネガネガしてりゃいいってもんじゃない。
俺は何も悪くないなんて言えないだろう?
親友も神子も妹も裏切って、大事な物を己の弱さのせいで失うんだ。
「軍師殿は兵の実力、知ってなきゃダメでしょう」
「そう、だよね、」
でも今は、言っても分からないでしょうね、と曖昧に笑うと今にも泣きそうな笑顔が返ってきた。
まったくもー!
「あのね、景時さん」
思わずガリガリと頭をかく。
彼の弱さは彼に原因がある。
顔が可愛いとか性格可愛いとか言ったって、共に戦う仲間としては最低だ。
チームワークの下忍試験で絶対落ちる。
だから突き放すが吉ってもんなのだが、私も随分焼きが回ったもんだ。
ため息を吐きながら手慰みに幻術の花弁をくるくる回す。
「ワタシ、強いんですよ」
俺たちとやり合いたきゃ軍艦一隻持ってこいってやつだ。
「逃げ足も早いし力も強い」
ぽかんとした景時さんの頭に幻術の花弁が乗る。
それを取ってにやりと笑った。
あんたの大切なもの全部、
「いつだって抱えて逃げてあげますヨ」