神子は語る。
彼女と初めて会った時の事。

彼女が現れたのは突然だった。

突然戦場に現れた彼女は強く、それは脅威でしかなかった。

誰も彼女に優しくなんてなかった。




それなのに、




不審がられながらも、自分を助けてくれた彼女、

疲れてないか、無理してないか、常に気にかけてくれていた彼女、

彼といる時だけ、年上なのに可愛い少女のように笑う彼女、

知らぬ間に、大切な仲間になっていた。

ずっと影で支えてくれた彼女は、

皆が救われたその後に、




突然姿を消した。




どこに行ったか分からない。

時間が来た、仕方ないんだと彼女は首をふった。

別れを言えるだけまだマシだなんて、笑いながら。




でも、





彼の流した涙の分だけ、

彼の叫んだ言葉の分だけ、

彼女は幸せにならなければいけない。





その幸せを彼女に問う為だけに、神子は白い鱗を握った。







11








「景時」

「頼朝、様」




時が来た。




「兄上!!俺はもう、必要ないんですか!!」




血を吐くようなポニーさんの叫び。




「兄、上・・・・?一体何を・・・・?」




黒神子さんの戸惑い。




「・・・・・・・・朔、こっちへ来るんだ」




向けられた銃口。

冷たい瞳。

その中にそっと浮かぶ、迷い、悲しみ、罪悪感。




「頼朝ぉおお!!」




還内府の咆哮。

深まる戦禍。




「みんな、引くよ!」




神子の鋭い声が戦場に響く。




さん!!」




時は来た。

梶原さんとこの母上はこっそりと神子と共謀して確保済み。

彼の弱味は彼の中にだけ。

船に乗り込む神子ご一行を見送り、私はにっこり笑って見せた。




「ワタシは残りますヨ」




ヒラヒラと手を振ると皆一様に驚愕の顔になった。




「なっ!!」

「死ぬ気か!!」

「そんな!!」

「まさか、裏切るおつもりですか?」




おー、最後のフードマンが怖くて仕方ない。




さん、」




その中で、神子だけが迷いない瞳をしていた。




「お願いします」

「オトモダチとの約束は守るタチですヨ」




戸惑う八葉たちを鋭い声で率いていく彼女は確かに神子の素質があるのだろう。

私には出来ないというか、全力でお断りだ、面倒臭い。

確かにこれからやろうとしていることも面倒臭い事のうちのひとつだが、




ちゃん、どうして・・・・?」




背中からかかる震えを抑えた声。

振り返ると銃口を向けたままの、もう八葉でなくなった彼。




「娘、何者だ?」

「烏のお嬢さん、貴女ね?」




と、髭とラスボス。

やべえ。

早まったかもしれない。

髭という名の源頼朝とラスボスという名の茶吉尼天。

おっふ。

ため息しか出ない。




「まあなんてゆーか、」




頭をカリカリとかいていると、源氏の兵士たちにしっかりがっつり囲まれた。

あんなに助けてあげたのにちょっと切ない。

まあ助けたといっても私がこっそりやってるのでおそらく姿を見た人はいない。

イコール、戦場でパーカージーパンは不審者確定。

・・・・もっと切なくなった。




「約束しちゃったもので」




へらりと笑うと一瞬、向けられた銃口が揺らいだ。

そんな事じゃつけこまれますよ、主に私に。





 
「・・・・・・・・連れていけ」




全ての感情を飲み込んだ冷たい横顔のへそさんにチラリと視線をやりつつ、大人しく捕虜になる。

立派な策がある訳じゃない。

この道がどの未来に繋がるかも分からない。

これが現実である以上セーブもロードもリセットもない。

ただの勘だ。




この男、一人にしておくとロクな事がない。





「可愛いお嬢さんねぇ、景時?」





うん、本当にヤバくなったら鎌倉吹っ飛ばしても逃げる。




書き始めたときは神子はポニーさんルートのつもりだったんですが、
こりは大団円になってしまうのか?
いや、手元に資料とゆー名のゲームがなくてですね?
勘、と申しますか、完全に夢主ルートとして広い心の皆様でお楽しみください。


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