うちの家族は変です。
変人家族。
うちは、小説家のお父さんと、ファッションデザイナーのお母さんと、三歳下の弟の四人家族です。
お金持ちです。
そして、びっくりするぐらいお母さんはお父さんにベタ惚れです。
たまにウザイです。
でもお母さんが滅茶苦茶美人で男前で可愛いので許す。
そんなお母さんと同じ血引いたので私もそこそこイケてます。
どちらかといえばお父さん似かなと思っていたら先日、お母さんの取引先の方に、艶々の黒髪とブラックオパールのような瞳に、白い肌と紅い唇がどうのこうの言われてドン引きしました。
小学生に欲情とか、万死に値します。
皆さん何となく予想がついていると思いますが、私はあんまり普通じゃありません。
前世の記憶を持って生まれてきました。
そんな私は間違いなく変な子どもです。
成人済みの記憶を持った子どもはそれはそれは変でしょう。
でも、私の上をいく強者がいます。
「祐介、いる?」
「何?」
弟です。
彼の部屋に入ると、パソコンを気だるげに触っています。
さらさらの黒髪と黒曜石の様な切れ長の瞳が涼やかな、正しくイケメン候補。
だって彼は幼児。
気だるげにパソコンを操作する幼児。
それが弟です。
成人女性の記憶を持つ私でも気を使ってやらなかったのに。
私の上をいく猛者です。
ベストオブ変人です。
「手空いてる?」
「見て分からない?」
カチカチとマウスを弄る手は確かに空いていません。
でもお姉ちゃんはそういうことを聞いているのではないのだと、何度口を酸っぱく言ってもききません。
何をしてるのかと聞いても無駄です。
ソーシャル何とかの何とかかんとかで株価がどうのと言われます。
そんな幼児嫌だ。
うちの弟だけれども。
ドアにもたれ腕を組みます。
「お母さんがシフォンケーキ焼いたからお茶にしましょうって」
「・・・・・・・・・うん」
人間嫌いで偏屈で理屈屋でド現実主義者で可愛いげの欠片もない、無表情、無感情、無愛想の三ない主義を地でいくちみっこ我が弟、椎名祐介を私は大変心配しておりました。
ある時までは。
「・・・・・・うん?」
ある日、小学生から帰ると子どもの靴が、二つ多い。
うちには絶対ない、泥々の履き潰した子どもらしい靴。
そして家の中が妙に騒々しい。
あの弟に、友だちができて、遊びに来た?
「そんな馬鹿な」
それしか考えられないのに、そんな事考えられない。
リビングに着くと、子どもが一匹、二匹、三匹。
何かわちゃわちゃになって遊んでいた。
何これ奇跡?
「・・・・ただい、ま」
「「おかえりなさい〜!」」
「おかえり、姉さん」
聞き覚えのない元気な二重奏といつもより活力のあるクールなお出迎え。
その後、
「姉ちゃん誰!椎名のねーちゃん!?オレてつし!」
とか、
「オレ、リョーチン!いーないーなあああ!優しそうなお姉ちゃんいいなあ!!うちのねーちゃんと取り替えてよ椎名あああ!」
とか、
「止めときなよ、この人変だから」
で、
「あんたよりマシよ、ベストオブ変人」
とかで、私もわちゃわちゃに巻き込まれ、生まれて十年弱の私も久しぶりに大声を出したり声を出して笑ったりした。
「祐介、」
「何?」
「いい友だちできて良かったね」
「人の事より自分の心配したら?友だちいないんだから」
大きなお世話です。
その後、姉ちゃん友だちいないなら今日からオレたち友だちな!という男前なてつし君の言葉により私にも友だちが出来ました。
そして、彼らはこの上院町のイタズラ大王、三人悪として名を轟かす。
極楽堂という薬屋、通称地獄堂を別宅に、いっぱしの術者として渡り歩いていくのはこの数年後。
どうやら、私はただの前世の記憶持ちではなく、
転生トリップだったようです。
原作者様のご冥福をお祈りします。
悲しくてたまらないので、ちょっとだけ書かせてくださいね。
少しだけ、三人悪たちと仲良くさせてください。