なぁ、ドクター。
ドクターだったら、どうする?
君を思うと、
どぉん!!
突然大きな音を立てて医務室の扉が吹き飛んだ。
正しくは誰かに吹っ飛ばされた敵が突っ込んだのだ。
「誰だぁっ!船を壊す野郎はぁ!!」
フランキーの怒鳴り声が聞こえるが、それどころではない。
「ロビンっ!!」
脳裏に浮かぶのは熱に苦しむロビンの姿。
「お、おい!チョッパー!」
ただそれだけを思って医務室に突っ込こむ。
「ロビンっ!!ロビン!!」
部屋に飛び込み目に入ったのは、粉々になった扉の破片と大男の背中。
「トニー、くん・・・・」
そしてベッドから体を引きずり出され刃を向けられた苦痛に歪んだロビンの顔。
「やめろぉぉぉおおおお!!」
何かが脳裏を過った。
それはロビンだったのかドクターだったのか、とにかく大事な何かだった。
「はぁっはぁっはぁ!」
がむしゃらに動いた体は大男を吹き飛ばし、もう一方に大穴を開けた。
「てめぇ!壊すんじゃねぇっつんてんだろうっ!!」
文句を言いつつ既に扉を直し終えていたフランキーはついでに大男を海へと放り投げた。
「ロビン!」
「大丈夫よ、トニー君」
少し咳をし首を擦ったロビンに外傷は見当たらない。
ただ、熱は相変わらずのようだった。
「終わったみたいね」
ロビンが遠くを見るようにそう呟いた。
それは戦闘なのか壁の修理なのか、ともかく遠のいた危険に安堵の涙が浮かんだがそんなものロビンに見せるわけにはいかない。
「ロビン、もう大丈夫だから、寝るんだ」
「あら、平気よ」
「ウソつきはウソップの始まりだぞ!船医の言うことは聞くもんだっ!」
無理矢理ロビンを布団に押し込むとまた、あのモヤモヤに捕まった。
伝えたいことが上手く伝えられないモヤモヤ。
もし悪い予想が当たったらどうしようというモヤモヤ。
そんなことを思いながらも体はしっかりと動きロビンの診察にあたる。
熱を測り薬を調合し割れた水差しを片付け新しい物を出す。
「トニー君」
「っ!な、なんだっ!!」
声をかけたロビンはとても綺麗に笑っていた。
「ありがとう」
「・・・・ロビン、オレ・・・・」
あまりに綺麗な笑顔だったから、言葉が溢れて落ちた。
「オレ、もっと強くなる。今はまだ弱いけどもっともっと強くなるから、」
初めての友達はドクターだった。
初めての先生はドクトリーヌ。
初めての仲間はこの船のみんな。
「ロビンは大事な仲間だから!」
だから、遠慮なんてして欲しくない。
頼って欲しい。
大事だって思って欲しい。
大事な大事なロビンだから、
「頼りにしてるわ、トニー先生」
「おうっ!!」
ロビンの言葉と笑顔に胸に詰まったモヤモヤは何処かへ吹き飛んだ。
「ハラへったー!飯にしようぜ!メッシー!!」
「さっき食べたばっかでしょーが!」
賑やかなみんなの声が聞こえてくるが、今はまだこの幸せに浸る事に決めた。