ロビンを見ていると、
昔を思い出す。
ずっと昔、ではない昔、
少しだけ、ちょっとだけ、むかし、
そして、
大切なヒトを思い出す。
君を思うと、
ロビンが熱を出した。
「これでよしっと」
風邪ではない。
敵襲で受けた傷が化膿したのだ。
「ありがとう、トニー君」
いつも通り何ともないように話すロビンだが、頬は赤い。
「これからはもっと早く言ってくれよ」
全く、とため息を吐けば困ったようにロビンは笑う。
困っているのはこっちだ。
「かすり傷でも油断したら破傷風になることだってあるんだぞ!」
頭のいいロビンがそれを知らないわけがない。
「そうね、ごめんなさい」
サニー号で新しく出来た船医室のベッドに横たわるロビンはやっぱり困ったように笑う。
「ロビンは、」
言葉を続けようと口を開いて、やっぱり止めた。
相手は患者だ。
熱はまだ下がらないため辛そうに呼吸する。
「なぁに?」
でも、笑う。
おそらくは、たぶん、きっと、そう。
「ロビン、オレは船医だ」
「えぇ、知ってるわ」
飲み込んだ言葉を形を変えて吐き出す。
「オレはトナカイだ」
「そうね」
ロビンが小首を傾げた。
何が言いたいかオレだってわからない。
ねぇ、ドクター。
どうしたらいい?
どうしたら届くだろう?
「オレは、」
「敵襲だぁぁぁー!!!」
「っ!!」
ウソップの悲鳴に似た呼びかけが響く。
「ロビンはここにいろ!出てきちゃダメだからな!」
起き上がるロビンを制しオレは震える膝を無視して医務室を飛び出した。
だって、オレは、男なんだから!