お登勢は狂犬を飼い慣らしている。
そんな言葉がそこここで聞こえるようになってきた。
銀髪侍か、兎の子か、
何にしても大家さんは大変だ。
シスターはかぶき町の世界も生きていた?2
カシャンカシャン。
スナックお登勢の扉をノックする。
毎月恒例家賃のお届けだ。
普通に声をかければいいんだろうが、ここ何百年単位で喋らない日々が続いたから声を出すのが億劫になっていた。
喋らなくていいのならそれに越したことはない。
大家さんも万事屋も意味を汲んでくれるし、それ以外に交流はない。
薬を買いに来た客と話す事もない。
本当は仕事をしなくても戦国の時と同じ様に山奥に隠居しても良かったのだけど、大家さん恩もある。
そもそも幼児が隠居するとまた見つかった時が面倒なのだ。
あー、やだやだ。
戦国を思い出して身震いした。
「・・・・・・・・?」
それにしても、大家さんの反応がない。
いつもならすぐにあのしゃがれた味のある声で返事があるのに。
戸を引いて鍵がかかっていることに気付く。
おかしい。
鍵なんていつもかけていないのに。
「っ、」
そう思った瞬間だった。
覚えのない気配が店内にいる。
それが肉薄して、
がしゃん!!!
引き戸が鍵を無視して大きく開く。
鍵なんて関係ない。
こちらを向く不審者。
その時にはもう、カウンター越しに大家さんを掴む両手を踏み、クナイを片目に突き付けた。
「 、」
切先が眼球に届く、ほんの少し前に大家さんの声がかかる。
「なぁに?」
「・・・・カウンターに上るもんじゃないと何度も言ったろう?」
「だめ?」
「ダメさ。店が汚れっちまう」
なら、止めよう。
クナイを引っ込め、すとんとカウンターの高椅子に腰を降ろすが、隣の男は身動ぎせず脂汗を流している。
「じゃま」
そう呟くと金縛りでも解けたかのように無様に走り出した男を見送った。
「よかったの?」
「いいさ。それよりさな、あんた昼飯は食ったのかい?」
「まだ」
「しょうがない子だよ、全く」
うちは健全なエロを嗜む店だってのに。
そうブツブツ言いながら、オムライスを作る手は優しい。
大家さんの作るご飯は単純だ。
野菜は少ない。
居酒屋らしく塩分は多い。
だが、毎日ここで昼飯を食べる。
栄養を摂取するだけなら薬でいい。
滋養を摂取するだけなら薬でいい。
そうじゃなくて、
「おいしい」
「そりゃ良かったよ。全く世話のかかる子だ」
自分が強盗に襲われていたのによく言う。
玉ねぎとウインナーしか入っていないケチャップライスに甘い玉子焼き。
「うん」
愛情はここからしか摂取出来ない。
「おいしい」
万事屋が狂犬だって言うなら、
もっとちゃんと大家さんを守ってもらわないと困る。
スナックお登勢は狂犬を飼い慣らしているという噂がかぶき町を飛び回る。
番犬は銀髪の侍。
しかし、狂犬と言えば、
その姿は、幼い子どもだというのだから、
謎はより深まっていった。
萌が高まると続き物になります(笑)誰得なんだ。でも可愛くて仕方がないというのが妹との見解です(笑)
後何をどうしたらスレイ世界の夢主みたいになんだろう?と言いながら行けそうな世界を見繕ってます♪