「・・・・あんた、何やってんだいこんなところで、」

「・・・・・・・・」 

「ここは寒いねぇ、年寄りには堪えるってもんだ」

「・・・・・・・・」

「一杯どうだい?」

「・・・・・・・・」




差し出された甘酒で自分の年齢を悟った私は、

おそらく死んだ魚の目をしていた事だろう。

この世界の主人公と同じように。








シスターはかぶき町の世界も生きていた?







ともかく私は疲れていた。

嫌だって言ってるのに寄ってくる戦国武将たち。

最初は興味本意と同情だったのだろう。

それすらイラッとして一人叩きのめして追い返したら、寄ってくるのが倍に増えた。

え?あいつを倒しだと!?みたいな。

某とも勝負してくだされ!いや、オレが先だレッツパーリー!!みたいな。

嫌だって言ってんだろ。

どういう教育されてんだ。

いい加減にしろよクソ野郎共が。

そんなわけでバッタバッタとなぎ倒したら知らない間に日の国統一。

今度は戦国武将が求婚者になって寄ってきた。

日の国を統一した姫をめとるんだと。

まずは儂の娘にならんか?いや、我の。我輩の。みたいな。

もういっそみんな息の根止めてやろうかレベルまで追い詰められている時だ。

山の穴を潜り抜け自分の家にたどり着いたつもりだった。




「は、こど、も?」




目の前には中年女性。

思わず眉を潜める。

家の回りには強力な結界が張ってある。

魔王も梟も伝説すら入れないここに、人が、一般女性が入れるはずがない。

ぱっと辺りを見回すと見慣れた自宅はなく、見覚えのない町が見える。

大きな町だが所々建物は壊れ、焦げ臭い空気が辺りを漂っている。

ここ何年か何度か見た、戦中の町の姿だ。

空を飛ぶ飛行機。いや、宇宙船。

そして目の前の女性に視線を戻す。

雪の降る大江戸かぶき町。

渡された甘酒。

それがこのかぶき町四天王寺の一人、健全なエロスを嗜むスナック経営兼大家さんとの出会いだった。







「おぉい、 。いるかい?」




あれからまたもや十年と少し。

大家さんから家を借り、薬屋を営んでいる。

私の外見はまたも幼児に戻っていたので今もティーンな年齢なのだが、十年も薬屋を構えていれば常連もいる。

店先に顔を出せば、見慣れたその一人。

大家さんだ。




「ああ、悪いんだけど、またあの馬鹿がやらかしやがってね。見てくれるかい?」




正しくは、大家さんの店の上に住んでいる銀髪が、であるが。







「なあ、 。銀ちゃん、治るアルか?」




何をしたのか知らないが腹に穴を開けた銀髪侍を心配そうに見守る兎の子。

思わず頭を撫でる。




「ほら、神楽ちゃん、 さんの邪魔になっちゃうから。 さん、いつもすみません。よろしくお願いします」




丁寧に頭を下げ、水入りの桶と手拭いを置いて眼鏡少年が部屋を出る。

手慣れたものだ、と思いつつこんな事に手慣れなきゃならない青少年を不憫に思う。

何やってんの、このマダオ。





「っ、ぅ、怪我人の、頭ぁ叩く医者がどこにいんだ、コノヤロー・・・・」




思わずぺちんっと頭を叩くとうめき声が聞こえた。

意外と元気だ。

ジト目でため息を吐く。

医者じゃない。

薬屋だ。




「・・・・明日までに治せるか・・・・?」




患部を見る。

たいした傷じゃない。

頭さえ吹き飛ばなきゃ治せる魔法薬の基準で考えれば、だか。




「・・・・おい、 ?」




いつもなら頷いて治してしまうのだけれど、




「・・・・おーい、 さーん?」




心配そうな三人の顔が次々に浮かんでは消える。




「・・・・おい?寝てんのか?おい、っ!」

「なおさない」




すくりと立ち上がる。




「・・・・は?」




簡略でない、正式で全力な結界を布団の上の人物に向けてかける。

大丈夫。

生理現象も緩和されるから一日ぐらい監禁オーケー。




「ちょ、おい? ?」

「これより、しゅうちゅうちりょうをはじめます。二十四じかんは、ここからでられません」

「は?へ?おい? ?いや、へ?お前がそんなに長く喋るの銀さん初めて聞いたよ?」

「あんたは、いいかげん、じぶんのからだを、だいじにしなきゃ、だめ」

「ちょ、おい?」

「どくたー、すとっぷ、」




そのままスパンっと襖を閉めると、銀髪侍が叫ぶ。




「ちょ、お前医者じゃねーだろ!ただの町のお薬屋さんだろーが!ちょ!!開けろって起きれねぇ!!何これぇぇぇえええ!!!!ちょ!!銀さん信じないからね!この、布団の上から起きれなくなるやつ、かなしば、何とかとか!絶対信じないからね!!!」




十分元気だよあの人。

ため息をつくと不安げに様子を伺う子どもたち。

外見的には私の方が幼いのだが、それはともかく。




「けがのけいい、くわしく」




お宅様の主人公をドクターストップしたからにはフォローが必要だろうと、ここ数十年出さなかった仏心を出したのが間違いだった。

ずるりずるりと巻き込まれ、何だかんだで万事屋の準レギュラー扱いされるのはこの数か月後。







「あんた、そのけがいいかげんにしないと、すまきにして、ほうりだす」

「ちょ待てぇぇぇえええ!!!!どこの世界に患者の怪我悪化させる医者がいるぅぅぅうううう!!??」

「そこかしこ」

「悪かった!!銀さんが悪かったから勘弁してぇぇぇえええ!!!」

「またやってるネ」

「銀さんも懲りませんね。そんな怪我したら さんに怒られるに決まってるのに」

「銀ちゃん、 に構ってほしいだけアル!!これだから男ってダメネ!」

「てめぇ!神楽ぁ!!何をどう見たらそんな見方ができんだ!!この能面顔どうにかしやがれ、いや、してください!お願いしますぅぅぅうううう!!!」

「うるさい」










 この辺りから私の萌えが大爆発しています。無表情無口の幼女が愛しい。←変態
あ、片言も好きです。異世界トリップで言葉覚えかけ最高。ぜひそのままでいてほしい!
・・・・すみません。燃え上がりました(笑)
そんな訳でよく単語で話す夢主です。萌えです←くどい。


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