「ちっ」
とりあえず、私が舌打ちしてもいいだけの理由はあるはずだ。
シスターは麦わらの世界も生きていた?
眼下に広がる大海原。
目の前には宝箱。
嫌な予感がする。
いや、正直に言おう。
嫌な予感しかしない。
目の前の物体は放置しまずは右手を確認。
小さい。
つい一瞬前まで魔法学校で教鞭をいやいやとっていた三十路過ぎとは思えない小ささだ。
あのクソ双子のクソ悪戯にかかるほど耄碌したつもりもない。
ちなみに毎度毎度わざわざ丁寧に悪戯に引っ掛かる面倒見が良すぎて人生損してる育ちすぎたコウモリな同級生を鼻で笑うのは日常茶飯事だ。
それはともかく。
服装はついさっきまで着ていたローブでなく無難な子供服。
おそらくこれが、この世界の基準値。
それでも体の各所を探れば暗器、クナイ、術譜。
ご丁寧に腰のポーチは愛用品で今までの物がごそっと入っている。
チャクラ、念、魔法、問題なく使える。
「で、私に何をさせたいわけ?」
目の前の宝箱の中、触ってもいないのに開かれた中に入っていたのは目に煩わしい渦巻き模様。
悪いけど、私にそんな余裕はないのだよ。
呪うように呟いた言葉は波がさらって消えた。
あれから十数年。
随分と時間がたったもんだ。
今、眼下に広がるのは、
男たちの咆哮、熱気、愛、情、策略、
そして、生と死。
一繋ぎの財宝を狙う彼がどうしても通らなければならない、いわゆる頂上決戦。
そう、何だか今ちょっと全世界で話題の頂上決戦の舞台に来ています。
あの、フラグかよ、と言わんばかりの宝箱をスルーしたその後。
残念ながらあの島は主人公おわすフーシャ村で。
残念ながら心優しい酒場の美人さんに拾われ、
もうその後はお約束のレールに乗って、
主人公と出会い、
共に山に捨てられ、
山賊に見守られ、
炎のそばかすと帽子の用件人間と出会い、
なんでか知らないうちに盃を交わすという愚行を行い、
モロモロあって今に至ります。
は?麦わら海賊団?絶対入らないし、村で別れてから姿も見せてませんよ。
見せたら最後、あのクソ忌々しい主人公補正ともいえる強引さで巻き込まれるのは目に見えているので。
クソゴムはクソゴムで好きに生きたらいいのです。
全ての道は彼へと繋がっているのだから。
それよりも。
何よりも。
私が現代にいた頃にこの作品が完結してなかったのが何よりも悔しい。
何がどう繋がるか分からないけれど、
これだけは言える。
「必要なのはエース君、君の死、という事実だけ」
胸の痛い義兄弟の咆哮。
そして、遺言。
いやいや、愛してくれてありがとうってのはね、お兄ちゃん。
「自分の口で言ってなんぼですよ」
と、トータル年数、三桁を越える君の義妹は思うわけですよ。
「は?」
「というわけで、生き返らせてみました」
「はああああああ!!!!!!おい、 !!!」
目が覚めた途端元気ですね火拳の。
いや、もちろん、完全に死んでからじゃありませんよ?
心配停止直後からかっさらって全力で回復させました。
流石、忍と狩人と魔法のトリプルの回復力は違います。
「といっても、頂上決戦から貴方が目が覚めるまで半年。完全に体動くまで二年ってところでしょう」
「っ!!」
「一度死んだ貴方の体から悪魔の実は出ていったようで、もう火拳は使えませんよ」
「っ、そう、か・・・・」
ぐっと拳を握る義兄に軽く肩をすくめます。
「いいんじゃないですか?貴方の意思はサボ君が継いでくれますよ」
「はあ?何言ってんだ、サボはあの時」
「そうですね、死体は見つかりませんでしたけど」
「・・・・・・・・」
「ちなみに、今の貴方も世間一般様から見たらそんな感じだと思いますよ?」
もちろん、彼の死体の変わりは置いてきたのでカモフラージュは完璧です。
例えば義兄弟の麦わらでも火拳の死は疑えません。
まあ、麦わらだからでしょうけど。
「って、ことは、まさかっ・・・・!!」
「そう、だから、必要なのは君の死。その事実だけなのです」
実際に死んでなくても文句は言われないと思うのですよ、私はね。
「っおい! !!サボ探しに行くぞ!いや、その前にルフィに!!」
「その前に貴方の体の完全復帰でしょう。聞いてました?二年はかかります」
「半年で十分だ!!」
「医療忍者としての私に喧嘩を売るなら買いますよお兄様?」
まあ、何やらかんやらで、麦わら海賊団の二年後に間に合ってしまい、
ルフィ、サボ、エース、そして私。
その奇跡の出会いが行われるのは、
まだ少しだけ先の話。
「「ぢょ、エ゛ーズぅぅぅうううう!!!
ぁぁぁぉあああううううおおおおおえええええああああああ!!!!!」
「ちょ、二人とも汚い」
最強主が最強になるまでの軌跡をなんとなく(笑)
一応、忍者→狩人→魔法→海賊、みたいです←おい。
ざっくりとなので前後関係を無視しています(笑)
より広い心でお楽しみください〜