生前、私はOLだった。
不況の煽りを受けながら何とか地元会社に就職。
働いて働いて、
あの仕事が特別好きだったわけじゃない。
ただ、皆そうしているから私もそうした。
そうして、ぼんやり信号待ち中にトラックに突っ込まれ幕切れとなった。
なんて呆気ない、
私の人生。
油屋と私。
「あんたかい、紛れ込んだ人間ってのは」
そんな齢十歳、中身はアラサーの私に何だか非常に見た事がある情景が浮かんでいる。
映画で見た、とかではなく。
高校の底意地の悪い教師や、大学の先輩、会社のお局様にそっくりだ。
いた。
いたよ、こういう人。
「ここで、働かせて下さい」
「何でアタシがあんたみたいな小娘を雇わなきゃならないだ」
「ここで働かせて下さい!」
全く顔を上げず取り合おうともしない湯婆婆に向かって、胸を張り声を張り上げる。
腹式呼吸はどうやるんだっけ?
「お黙り!」
口をチャックの様に縫い付けらる。
それでも言葉にすべきは一つだけ。
「ふふん!んんんむんむんんん!」
「強情な餓鬼だね!」
強情にもなる。
そうでなければここまで連れてきてくれた人達に申し訳が立たない。
それに齢十歳、豚になる気はない。
「誰があんたをここまで連れてきたんだい?なぁに、ちょいと褒美をあげるのさぁ」
猫なで声に鳥肌が立つ。
それよりも顔が私の腰まであるってどんだけ顔がでかいんだ。
「んむっここで働かせて下さい!!!」
「この小娘!!」
私が小娘ならあんたは顔でか婆だ!とか思っていたら地鳴りと共に壁から巨大か足が生えた。
ふっくらとした赤ん坊の足。
ぎょっとするが映画を知ってる身としてはこれは好機。
一気に畳み掛けるしかない。
大きく息を吸い持ちうる限りの大声を出した。
結果、どさくさの最中に了承を勝ち得たのだが、
何だか湯婆婆が育児に疲れた母親に見えた気がした。