「すいっまっせんっしたぁぁぁあああ!!」
「千尋?どうしたんだい?」
草むらに隠れた瞬間に小声でジャンピング土下座をかましかけた私に、ぽかんとした神様の瞳が痛かった。
油屋と私。
当然なんだが、油屋は上へ下への大騒ぎになっていた。
右ストレートが効きましたか。
私たちは原作通り中庭の草むらに隠れている。
隠れながらも何でか手は握ったまま。
あれ?本当に映画沿いですか?
へ、変な汗が出てきた気がする。
「千尋」
「は、ひっ!?」
変な声が出ました。
しょうがないと思いませんか?
だって顔を上げるとド近いところに顔があるんだから!
「この下に釜爺という人がいる。その人に仕事がしたいと頼むんだ」
「ちょっ!ちょっと待ってよ!」
このマイペースおかっぱ神様が!
「場所はここだ」
「うひぃっ!!」
こつんっと当てられたおでこから脳に溢れ出す映像。
「ちょっ!これ気持ち悪いよ!!」
「分かったね?」
「分かったけど、じゃなくって!」
鼻がぶつかる位置でハクと視線がぶつかる。
「ハ、じゃなくて、あなたは、どうするの?」
「わたしが皆の気を引いておく。その間に釜爺に会うんだ」
「待ってったら!」
さっと立ち上がるハクを力一杯引っ張った。
意外に力の強いおかっぱ様を引き留めるどころか私が逆に引き上げられた。
辛うじて胸ぐらを掴む事で顔を合わせることに成功する。
「湯婆婆に会わなきゃいけないんなら一緒に行けばいいんじゃないの?」
別に釜爺に会いたくないわけじゃない。
ボイラーのじっちゃん、ドーラ船長はお元気ですか?
「それで、あなたは大丈夫なの?」
寂しいとか怖いとかではなくて。
否、怖いか怖くないかと言われればもちろん怖いんですけどね。
「私をここに通して、あなたが罰せられるんじゃないの?」
そうではなくて、ちょっと映画沿いを壊してみたくなっただけだ。
自分の思い通りにならない全てのものに、ここ十年の鬱憤というやつが吹き出した。
「例えば、あなたが捕まえてきた人間とでも言えばいいでしょう?」
予想外の出来事だらけに、自分の力が及ばない流されるしかない自身に、もしくは運命という名の主軸に、蹴りを入れてみたくなったというか、
「もう、こんな状況はたくさん。さあ、湯婆婆のところに行くわよ」
要するに、キレた。
用意された道は、映画の千尋の為の道はもうたくさんだ。
私は私の道を行く。
私自身の新しい扉を開く。
「千尋・・・・」
ビー玉みたいな瞳が私を写す。
やる気のないくたびれた千尋はもういない。
その瞳に写るのは怒りに煌めく少女の姿。
「君は、強く優しく、美しくなったね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
今、何か幻聴が聞こえました。
「ありがとう、千尋。心配してくれたのだね」
そっと微笑まれ、きゅっと抱き締められる。
ふわりと薫る知らないお香と懐かしい夏の川辺。
「わたしを快く思う者は少ない。わたしよりも釜爺の加護を受けるのが千尋の為だ」
分かってくれるね?と微笑まれる。
「覚えておいて、わたしの名はハク。ずっと千尋の味方だ」
そう耳元で囁くとハクは足早に屋敷へと入って行く。
屋敷の者を叱咤するハクの声。
ざわめく屋敷。
揺れる鬼火。
「私、何か違う扉開けた・・・・?」
真っ赤な顔をそのままに私はまたもや両手両膝を地につけるのだった。
拍手再録です。
orz再びです。
いい感じにイカレました!(笑)
ハク千なるか!
おかっぱ様は意外に真っ黒ではなく真っ白なもようです(笑)
すみません、真っ黒期待の方。
うちのおかっぱ様は真っ白というなの武器で彼女を落としにかかるでしょう!
ある意味最強。
否、彼女が勝手に引っかかってるだけな気もします。