あまりにあんまりで、
橋の下でまるまって半ベソかいていたところをハクに見付かりました。
何かガッカリです。
油屋と私。
「これを食べなさい」
見た目は子ども、頭脳は大人なのに半ベソです。
あまりに恥ずかしくいたたまれなく命令口調にいらっとして無視をしたら体が半透明になりました。
「呪いっ!!?」
おかっぱのっ!!?
「これを食べれば大丈夫だ。さあ」
「食べさせてくれなくてもけっこう・・・・」
スカって差し出された実を手にすることもできませんでした。
こんな幽霊体験いりません!
既に一回ちゃんと三途の川も渡ってますから!
「さあ、口をあけて」
「何、この羞恥プレイ・・・・」
ビー玉みたいな目をした神様に欲情の色なんてあるわけなく、一方的にこっちが恥ずかしいだけなんだが、悪意がない分余計に自分の俗っぽさが恥ずかしい。
噛み砕いて飲み込んだ赤い実は(別にぱちんと弾ける詩的なものでなく、むしろ弾けたら問題な気がする)少し、酸っぱかった。
「千尋、立てるかい?」
「何処に行くの?」
「油屋に」
これは完全に映画沿いだ。
ああ、嫌だ。
何かの意思通りに動かされるなんて真っ平御免だ。
映画のヒロインとか柄じゃない。
あ〜せめてトトロがよかったのに、トトロに癒されたいよ。
つか、このまま家に帰してくれ。
グダグダと脳で言葉が流れる。
ハクから見れば、逡巡する少女の姿そのものだ。
愚図で鈍間な千尋で結構。
特別なんて望んでいない。
可笑しな体験はこれ以上いらない、と思うのは決して我侭ではないはずだ。
「湯婆婆に会わなくては。この世界では仕事をしなくては生きていけない」
「仕事・・・・」
思い出すのは前の生。
必死働いて休みのために働いて、稼いだお金を使う間もなく呆気なく死んだ前の人生。
「・・・・仕事」
今出来るのは宿題とお手伝いとお喋りのみ。
「いいかも」
君子危うきに近寄らず、と思いつつも、止まらない感情。
私の中でじんわりと広がる、あの充実感。
「あぁ、働きてぇ」
退屈で死にそうだったここ数年。
久々に感じる高揚感。
「・・・・いいこだ。千尋」
何故か突然ハクに頭を撫でられ、風のような速さで連れていかれました。
ちょ!首もげる!
拍手再録。
ハクはどうも距離感が近い気がします。