獣はぐったりと意識なく、
私はあげかけた悲鳴を飲み込んだ。
とりあえず、達磨、ぶん殴る。
油屋と私。
「ちぇーすとぉぉぉおお!!!」
無駄な掛け声をかけながらハクに群がる達磨をスカコーン!と蹴り飛ばした。
裸足痛い。
「ハク!!」
ビビる達磨トリオを無視しハクに駆け寄ると、意識がなく呼吸も弱い。
虫の息だ。
どうする?
「ハク、っ、しっかり!!」
獣相手に人工呼吸は無理がある。
口の形が違うもの!
そもそも外傷はどこだ。
せめて止血をしなければ!
「ハク、傷をっ」
見せて、と手を出すと低い唸り声。
意識混濁に目が見えていないとなれば相当ヤバい。
「ハク?大丈夫、私。千、うんん、千尋よ?大丈夫、・・・・大丈夫だから、ね?」
今私にナウシカごっこをする余裕はない。
怯えさせないようにゆっくり手を出し鼻先を撫でる。
「・・・・っ」
口角、声帯が違いすぎるからか、それとも体力の消耗からか白竜は人語を喋らなかった。
ただ小さく、クォと応じその鼻先を私の手のひらに擦り付ける。
「・・・・ふぅ」
こんな事言える時ではない。
なのて胸中でのみ叫ぶ事とする。
可愛いすぎるやろうっっっ!!!!
これは何だ?
新しい罠か罠なのか?
私は元々猫派だ!
決して犬派ではないがこの顔だけなら犬に似ているナマモノのこの愛らしさは何だ!!
少年ハクが可愛いのはつい鼻血と涎が出そうなほど、ショタでもないのについつい転びそうなほど可愛いのは重々承知していたがこの獣ハクの可愛いさは!!
あれ?
なんなの?
結局私なんなの?
あれ?
あれなの?
結局嘘偽りなく疑いようなくスッ転んだってそういう?
そういうあれ的な?
あれ?
いいの?
私前合わせると相当大人ってゆーかそもそも神様に転んじゃってこれからの人生大丈夫なの?
もういいの?
もういいのか好きにすりゃ。
所詮、奇想天外な人生に生まれた時から片足突っ込んで千尋とわかった時点で腰まで突っ込んでんだから頭まで浸かっても同じ事か!
「自分会議、しゅーりょー」
この間およそ二秒。
それでも思わず右手を上げて宣言する。
なんていうかこれでいい。
私の人生これがベストな気がする。
目標も目的も見出だせず、腐りながら過ごした十年間。
人生の目標が、この竜のためなら、いいじゃないか。
生きる目的が、キミのためなら、いいじゃないか。
「おまえなんか、こわくないぞ!坊とあそべ!あそばないとないちゃうぞ!」
「やれやれ喧しい事だねぇ」
坊だろうが湯婆婆だろうがカオナシだろうが銭婆だろうが何だろうか、
私に勝てるやつなんていない。
だって、私は、
「私の竜は渡さない」
私の生きる意味を見つけたから。
拍手再録。
もう一度言います。大好物なんです (笑)