朝起きたら誰もいなかった。

何コレいじめ?









 

油屋と私。






昨日目が覚めた時には皆マグロのように寝こけていたというのに今日はもぬけの殻。

そして遠くから聞こえる歓声と宴。

うん、





「寝よう」




黒いジャミラになんぞ会う気はない。

もう一度布団を被り直す。

は〜やれやれ、と思ったところで轟音が響いた。




「ひいっ!!」





ばんばんばん!と窓ガラスが酷い音を立てる。

寝ている場合ではない。

上衣をひっ掴み慌てて廊下に出る。

だって背中丸出しだもの。

セクシー前掛けだもの。

そんな事を考えていた余裕は廊下に出た途端に消え失せた。





「っ!」





思わず息を飲む。

ベッタリと窓ガラスに付いたおびただしい血。





「ホラーーっっ!!!?」





ホラー再び。

卒倒しかけた視界の端に入り込んだ白い大きな長い何か。

それは血だらけで意識も危うい。

なのに周りには容赦なくそれを追い込む白いヒトガタ。





「っ!ハクっ!!」




出た声はまるで悲鳴のようだった。





「ハク!!」





獣がこちらに気付く様子はない。

ばんばんとガラス叩くが空中で暴れまわるハクには届かない。





「チッ!」





舌打ち一つ響かせ窓ガラスを全開にする。

せめてあのヒトガタから引き離さなくては。





「ハクっ!!こっちに!!」





声が届いたようには見えないが出口を求め追われたそれは無我夢中で部屋に飛び込んだ。

しかしそれはヒトガタも同じ事。





「むぐっ!」





びちびちびちっ!!と顔に貼り付く。

口を開けてなくて良かった。

ヒトガタが口に入るなんて最低だ。





「ぐぎぎぎっ」





口にこそ入らなかったが鼻と口を塞がれては息が出来ない。





「ちく、しょ!」





死ぬ。

そんな気はさらさらないが。

負けず嫌いと根性だけで強引に窓に力を込めるがうんともすんともいわない。





「・・・・つ〜っ!」





これが今まで怠惰の代償か。

もっと真面目に体育やっときゃ良かった!



ぱしんっ!!





「・・・・!?」





突然風船が割れるような音がして息が入り体に力が戻る。

勢いで窓を締め振り返れば瞳を光らす獣がゆらりと尾を動かしていた。





「ハク、が助けてくれた、の?」





肩で息をしながら問いかけると、獣の目が少し大きくなった。





「ハク?」





ぐががががああああああ!!!



突然の咆哮。





「ハクっ!!」





目から光が消え、もがき苦しむ獣はそのまま窓ガラスを破り飛び去った。

行き先は、上。





「チッ!」





大きく舌打ちし私は走り出した。




助けるよ。

今度は私が。


 

 

 

 

 

 

拍手再録。サイト一の舌打ちキャラに認定されました(笑)

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