とりあえず、
御腐れ様はすっっっっっごい臭いだった事を明記しておく。
油屋と私。
雨が上がり空には満天の星が浮かぶ。
海に様変わりした夜景を見ながら私はぐったりと手摺にもたれ掛かった。
「あーーー・・・・」
つっっっかれたなあおい。
オッサン結構。
ビールが飲みたい。
ぐぐっと伸びをするとバキバキと音をたてる肩と首。
太ももとふくらはぎも早々に筋肉痛だ。
「・・・・鍛えよう」
何かこの動けなさ、子ども的に良くない。
「そうしろよ千!お前マッチ棒みたいだもんな」
ほらもっと食え、と涼みに来たリンに渡されたのは顔より大きな中華まん。
マッチ棒。
否定はしないけどマッチ棒。
「ありがと、リンさん」
ありがたくかぶりつけば何か分からないが餡らしきもの。
良かった、流石に今豚肉は食べたくない。
シュール過ぎる。
「いや〜!頑張ったなよあ!千!」
「リンさんもね。あ〜、つっかれたねぇ」
お互いを称え合いながら思い返す今日一日は怒涛だった。
とってもとっても怒涛だった。
とりあえずカオナシ登場から困った困った。
ひたすら完無視を続けていたのに何だかんだで映画通りの展開だというのが腹立たしい。
途中で、あーあー言うな喧しい!とキレたのは大人げなかったかもしれない。
「うん、落ち着いて私」
手の中の苦団子を転がしながら呟く。
映画の彼女はこれをかじっていたが、絶対無理。
川の神様がくれたこれは団子は団子でも苔団子だよ、もしくは藻団子。
とにかく人間食用じゃない事は確かだ。
一人言聞き訝しげにこちらを見るリンに何でもないと首をふり中華まんをもう一口。
全く減らない。
「なあ、千はこれからどうすんだよ?」
「これから?」
黙々と中華まん攻略を半分ほど進めたときリンがおもむろにそう切り出した。
「リンさんは?」
「オレ?オレはさあ!」
キラキラと街へ行くんだと語る彼女を見ながら、ふと物思いに沈む。
これから。
千としての?
名前を忘れた私としての?
小学校を卒業し中学行って高校行って大学行って就職して結婚して子どもができて孫ができて死ぬまでの人生。
いつ、また死ぬか分からない人生。
長いようで一瞬の人生。
今、
ここで、
私は、
何を、
「っ!」
突然開いた未来への問いかけは、
眩しいというより、
奈落へ続くぽかりと空いた大きな穴。
先が見えず、
わかるのはただ、
これから先があることだけ。
「・・・・っ!!ぐっほ!がっほげへっ!!」
胃がすくむような恐怖から逃れようと慌てて口にしたのは苦団子で、
ある意味奈落からの帰還に成功したとだけ明記しておく。
拍手再録です。
苦団子全部食ってませんよ?(笑)
まるっと口にいれてあまりの苦さに噛む前に吐き出しました。
どうもあれは苔に見えます(笑)
どうもこのパターンが好きなようですかぁこさん。
よろしくお付き合いください。