子どもの様に振る舞った、
のでなく、
思うままに行動した、
のだ。
これが千の第一歩。
油屋と私。
「無茶をする」
「・・・・あ」
走り出してエレベーターに乗り込んで息を整えて、何て言うか、ハクの存在忘れてました。
ウイーンと機械特有の音が聞こえる。
結構な高さから降下しているようで少し耳鳴りがした。
「立場を理解しろ」
そんな中、振り向く事もせず目ん玉ビー玉な神様は独り言のように口を開いていた。
「ハク、」
「わたしの事はハク様と呼べ」
ごめん、忘れてたよ、なんて謝罪をぶった切ってハク様がおっしゃった。
「っ!ハ、ハク・・・・様?」
こ、これが!あの噂の名シーンっ!?
ハク様って言った!ハク様って言った!自分で言っちゃってるよハク様って!!様て!!ツンデレなの?女王様なの?否、むしろ最初かなりデレてたからデレツンなのってそんな言葉ねーよ!!
ちょっと待ってここってしゅんとしとくとこ?
「わ、わかりました」
思わず口元を手で隠し目を伏せる。
言葉が震えているのが自分でも分かる。
ごめん許して腹筋限界。
「・・・・」
何かを言おうと口を開いたハク様より一瞬早くエレベーターのドアが開く。
何て言うか腹筋が限界だったので逃げるように飛び出すとそこはまた、目を疑う光景だった。
「ぅわぉ」
見てる見てる。
めっちゃ見てる。
「この者は千。今日から湯殿で働く」
ハクの言葉に明らかな嫌悪、侮蔑、非難。
人間臭いってなんだナメクジと蛙のナマモノのくせして。
いい気はしない。
いい気はしないからこそ勇ましく。
「今日から!」
顎を上げ回りを見渡しぐっと口角を吊り上げる。
「よろしくお願いしまっす!!」
悪いけど新人いびりには慣れていてよ?
社会の基本は一に挨拶、二に謝罪、三四は笑顔で、五に手際、なんちゃって。
大声にぎょっとするナマモノ達を尻目にずかずか歩く。
リンを探してみるもこのクソ目立ってる状態で話しかけて良いものか悩む。
どうしよっかなーこれでリンさんの立場悪くなっちゃうかなーなんて思ってるとぐいっと強引に手を引かれた。
「千!」
「リンさん!」
そのまま人気のない場所まで移動し、にやりと笑ってサムズアップ。
これから、千の日々が始まる。
拍手再録。
ハク様ハク様。