あたしは極々普通の小学生だ。
算数が嫌いで体育も苦手で国語が得意な小学生四年生。
そのまま、普通に学生時代を終え、社会人になり主婦になるのが夢な、普通の小学四年生だ。
唯一特化するならば、前世でアラサーまでいった記憶がある、事ぐらいで、ある。
油屋と私。
「千尋〜いつまでもぐだぐだしてないの」
一番古い記憶は目の前に女の顔がどアップであった事だ。
それが今の母なのだけれど。
あんまりにびっくりして、ぎゃあと言ったつもりが、おぎゃあだった時の衝撃は十年たっても忘れられない。
「おっ!千尋!新しい小学校だぞ!」
どうやら自分は死んだらしいと思い出したのは一通りパニックがすんだ後で。
そういえば交差点に車が突っ込んで来たんだと思い出した。
「千尋〜?聞いてるの〜?」
その後、苦行の赤ん坊世代を乗りきり、自分で用が足せる素晴らしさといったらない。
せっかく、このまま小学生での面倒臭い学校生活が終わるはずだったのにっ!
「大丈夫!友達いっぱいできるぞ!千尋!」
それがめんどくせーんだよ父よ。
せっかく、せっかく、私がつつがなく友達も作り、何となく周囲の子ども達に馴染んできたというのに。
「はぁあ」
車は無情にも私を知らない景色へと連れ去っていく。
引っ越しなんて二人でしてくれ、なんてのは不可能だ。
だって私は四年生。
ママじゃないけど小学四年生。
また自己紹介して猫かぶって一緒にトイレいったりするのか・・・・
どうしよう、本当に面倒臭い。
いっそのこと友達作らない方向で・・・・
あ、でも親呼ばれたり無駄に心配されるのも面倒臭い。
何でこんな前世引き継いで生まれてきたんだか。
レベル引き継ぎ二周目、なんてゲームじゃあるまいし。
「はぁあ・・・・・」
私が今日何度目かのため息を吐き出した時だった。
「あれ〜?迷ったかぁ?」
「ちょっと、やめてよ」
全くだ。
ききっと音をたてて止まった車の目の前には山に囲まれた小さなトンネルがひとつ。
「ちょっと行ってみようか」
「えーお父さぁん!」
「そうね・・・・」
「お母さんまでぇ!」
面倒臭い!
面倒臭すぎる!!
「待ってなさい、千尋」
普通置いてく?娘を。
トンネルの先に見えなくなる両親。
否、昔の記憶足すと私の方が年上なんだけど。
周りを見渡せば木、木、木。
不意に感じる何かの視線。
そしてどっかで見たことあるこのシチュエーション。
それは多分、気のせいだ。
「あ゛ー、めんどくせ」
どっかの策士忍者の口癖を借りて、私は仕方なくそのトンネルを進んだ。
拍手再録です。
前回に引き続きとっても好評でありがたい限りですv
果たしてどんな連載になるのやら(笑)