果たしてコレを何と呼ぶのか?
be happy!
「はぁ」
「あれぇちゃん悩み事?」
あれからというもの、どうも某ゴリラが気になって仕方がない。
どうやらお妙さんの道場がこの団子屋の通り沿いにあるらしい。
「な゛ぜだあ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ!!!!お妙さぁぁぁああんんんん!!!」
「うっせぇストーカーゴリラだな!ねぇちゃんおかわり〜!」
毎日毎日ゴリラの雄叫びが聞こえる。
ぼっこぼこで血だるまになったゴリラはしばらくすると同じ制服のマヨだかドSだかジミーだか誰だかに引き摺られていく。
一日一回は当たり前。
多い日は一日四、五回。
「ふぅ」
「ちょ、ねぇちゃん?聞いてる?ちょっと?」
営業妨害以外の何者でもないが、かぶき町では見慣れた光景らしく注意をはらう人はいない。
私以外には。
「ちゃん!いやさんっ!?ねぇちょっと!!銀さん話聞いてぇぇぇええええ!!!!」
「ツケでのご飲食の方とお話することはありません」
「ねぇ酷くない?俺にだけキツくない?」
視界の端でちらちらする銀髪の天然パーマがぎゃあぎゃあ煩い。
今日もいつも通りゴリラが引き摺られ見えなくなったのを確認して改めて客とは言えない客の顔を見た。
綺麗な銀髪に流石に一応主人公顔は整っているし、背も高く文句といったら死んだ魚の目ぐらいか。おかしいなあ。
「・・・・ないな。やっぱり」
「ねぇ何か俺に恨みでもあんの!?」
再び悲痛に騒ぐ銀髪を無視し先程見えなくなったゴリラを思い出す。
「はぁ」
ストーカーだし、ゴリラだし、ねちっこそうだし、毛深いらしいし、ケツ毛ボーボーらしいし、すぐ泣くし、チンピラ警察のボスだし、頼りになるのか怪しいし、
「ふぅ」
ある意味一途で、情熱的で、ロマンチストで、笑顔が可愛くて、泣き顔も可愛くて、あのボコボコの顔もむしろ可愛い。
「もうこれは決まりなんじゃないの?決定打でしょう。だって何か乙女だもの私」
「何ブツブツ言ってんの?ちゃん?」
でもそう、お妙さんだ。
彼はお妙さん一筋だ。
粘着ストーカーにまでなっている男がぽっと出の極普通の団子屋の女なんかになびくだろうか?
「・・・・無くはない」
「無視か!」
モテない男がころっといく可能性は無くはないが、確率は低い。
なら、
「確率を上げましょうか。ねぇ万事屋さん」
「聞こえな〜い。銀さん聞こえな〜い。今までさんざん無視したくせに今更」
「お仕事をお願いします。報酬は今までの未払金の解消」
大人気ない三十路前の言葉を遮る。彼に選択肢はないのだ。
「・・・・そ、そんなはした金べっつに〜」
明らかに顔色を帰る万事屋さんに営業スマイルを浮かべた。
大変申し訳ないが、彼には是非働いて頂きたい。
私の幸せの為に。
「では、五万とんで三百八十五円。即金でお支払ください」
「ご・・・・?」
「五万とんで三百八十五円」
「・・・・ご〜」
「五万とんで三百八十五円」
「・・・・」
「五万とんで三百八十五円」
「・・・・ご依頼はなんでございましょう・・・・」
「大したことじゃありませんよ」
ネックはお妙さん。
少しでも成功率を上げるため、外堀から埋めていきましょう。
「恋のキューピッドってやつですよ、万事屋さん」
全ては私の幸せの為に。