「結婚して下さい」
「はい、よろこんで」
そんな理想のハッピーエンド。
チェックメイトをかけるまで、
後少し。
be happy!
2
天気は快晴。
風は良好。
ここに居着いて半年弱。
私は小さく伸びをする。
「う〜ん、決行日和!」
それはまさしくいつも通りの始まりで、いつも通りの終わりでもある。
「ねーほんっとーに!いいの?銀さん知らないよ?ほんっとーっに、いいのね?ほんっとに知らないよ?ねっねっちょっとちゃん聞いてるっ?」
その後ろで天然パーマの銀髪侍が酷く煩い。
「煩いですよ、万事屋さん」
「ちゃんヒドイ!」
酷くありません、と切り返すも彼と会話を楽しむ気はない。
視線は外に向いたまま外れない。
「まぁったく、アレのどこがいいんだか・・・・」
最後には諦めたのか不貞腐れた様に店内にある椅子に腰かけ、共に外を眺める。
その目はもちろん死んだ魚のようだ。
「万事屋さん、もうちょっと喜んでもいいんじゃないですか?ほらっ礼金二重取りですよ?」
「銀さんはそんなガメツイ男じゃねーの!」
かぶき町はいつも通り喧しい。
団子の注文を受け店内を動いても意識は店の外にある。
出来ることは全部やった。
正直自分でもちょっと引くなーなんて思わないでもないが、まあ彼相手にはこれぐらいが丁度いいだろうと開き直る。
細工は流々。
後は仕上げを御覧じろ。
「なぁちゃん、今ならまだ間に合うって!あんなゴリラより銀さんにしときなって!」
目入るのは待ちに待った彼の姿。
厳つい顔を可哀想なほど、否、原型ないんじゃない?な感じで腫らし、さめざめと泣く、いや豪華に泣きわめく彼の姿。
「何故だ!何故ダメなんだっ!お妙さぁぁぁぁああああん!!」
かぁわいっ。
これを恋と言わず何と呼ぶ。
「なあちゃんってば!銀さんにしときなって!」
先程からチラチラと目につく天パーは無視して自前の小花模様の手拭いを手に取り店外へ向かう。
「言ったでしょ!私、」
私は初めてしっかり万事屋さんを振り返った。
「私、ゴリラがタイプなの」
その後はもう振り返る事なく彼の元へと進む。
細工は流々。
後は仕上げをご覧じろ。
後に続くは決して外さぬハッピーエンド。