「何だよ、あの綺麗な子の姉だっていうから期待してたのに、大したことないじゃないか」
その言葉に顔色を変える、金と銀。
あー、めんどくせ。
15歳、思春期。
「いつも、あんなこと言われてたのか」
ベッドに腰掛け、こちらを見る金色狼に思わずため息を吐く。
何て面倒臭いことをしてくれたのだあの男。
フットボールだかロッドの優勝者か何だか知らないがマジ空気読め。
「ドミ!」
きゅっと眉を寄せる美しき狼に何と言えばいいか分からず、もう一度ため息を吐いたのだった。
事の起こりは何てことない、いつものお昼休みだった。
文化祭も終わり、楽しかった思い出と忘れたい思い出が同じぐらいにあるが、少し浮わついた空気が流れていたお昼休み。
いつもの通り、金銀天使とお昼ご飯を食べている時の事だった。
「何だかいつもより人が多くないか?」
「うん?確かに」
Aセット(肉メイン)をもりもり食べる金色狼とその隣でBセット(魚メイン)をはむはむ食べるあたし。
「体験入学で他の学校の人たちが来てるみたいですね」
その向かいで同じくBセットを銀色さんが上品に食べている。
とても同じものを食べている気はしないが今更なので何とも感じない。
「あー、何か、あったね、そんなの、」
「ちゃんと、飲み込んでから、喋ろよ、ドミ、」
「リィ、だって、」
「お二人ともです」
そんないつもと同じお昼休みだった。
いや、ある意味これだっていつもの事なのだけれども。
それはつまり、
「え?この綺麗な子男の子なのかよ!」
から始まり、
「え?この子があの綺麗な子の姉?」
に続き、
「 何だよ、あの綺麗な子の姉だっていうから期待してたのに、大したことないじゃないか 」
に繋がり、
「よく一緒に居られるな、少し周りを見た方がいいんじゃないか?」
まで付いてきた。
「・・・・・・・・おっふ、」
問題は、いつも教室で行われていたそれが金銀天使の目の前で行われた、という事だ。
無言で立ち上がる二人に慌てて手を伸ばす。
目が据わってますよ、特に金色狼!
「ちょ、いいから!」
「止めるなよ、ドミ。この礼儀知らずに思い知らせてやる」
「いいって!いつものことなんだから!」
「・・・・いつものこと、ですか?」
ついでに銀色さんの目まで据わった。
勘弁してくれよ。
まだガタガタ喋っているフットボール選手とそのマネージャーたちを無視し二人を宥め、何とかその場を収めた、
つもりだった。
しょんぼり顔の金色狼が女子寮の自室の窓から訪ねてくるまでは。
「えーっと、だからね?リィ、」
何と言えばいいのか分からず、頭をかく。
その時絡まった髪が邪魔で三つ編みを解き、背中に流した。
背中をおおう、長い赤銅色の髪。
ドミューシアとあたしは違うのだと、この髪を見ると思い出す。
髪の長い、ロッドをやらない、そばかすの変わりにそろそろ眼鏡が必要な少女。
少女と言いながら、この心に思春期特有の迷いや悩みはない。
「本当に気にしてないのよ」
「・・・・本当に?」
疑いながらそれでも心配をしながらこちらをじっと見る綺麗な弟に思わず苦笑がもれる。
本当に今更なのだ。
この弟たちと共に居れば当然悪目立ちする。
まあまあ可愛いドミューシアだが、着飾るつもりがないあたしよりきっと本家のドミューシアの方が可愛いと思う。
日本で生きていた頃は、どう見られているか認められるかばかりを気にして生きてきたと思う。
それが何の因果か、こうやって生まれ変わってすごした十五年間。
大切な家族、友だち、奇跡と憧れと敬意を持って出会った人々。
十分幸せなのだ。
今、共に居たい人たちと居て、
やりたい事をして、
まるで子どものように遊べることが、
とても幸せ。
「本当よ。正直どうでもいいわ」
「・・・・・・・・」
本気でそう言ったのが分かったのだろう。
弟は何も言わず下を向いた。
その綺麗な金の髪をそっと撫でる。
流れるような、金の髪。
瞳の色も、顔も、姿形も違うあたしたち。
それでも君の姉である事が最大の奇跡で、
最高の幸福なのだ。
「ある意味いいバロメーターになるのよ」
「何が?」
「リィの事を聞いてきた人とは仲良くしないことにしてるの」
ニヤリと笑うと一瞬呆気にとられた顔をした後、金色狼は豪快に笑った。
おまけ
「ドミはそういうが俺の腹の虫がおさまらない」
「ドミは優しいですし、本当にそう思ってるんでしょうけど、」
「シェラ」
「はい」
「ルーファのところへ行くぞ」
「はい!」
「俺を今すぐ十九才の女の子にしてもらうおうか」
どうなるのかなこの回とウキウキした回でした(笑)
その後、原作通りに進むと思われます。
この後どうしようかな?オリジナルでいろいろ交流を深めるのもありだし、王様にも会いたいですね♪