突然夜中にに叩き起こされた。




「起きなさい、ドミューシア・ヴァレンタイン!」

「ふぇ、い・・・・?」




何でもアーサーが危篤らしい。

そんな阿呆な。

訳も分からず校門へ向かうと、金銀天使と共に車に押し込まれた

わぁお、これは巻き込まれるパターンですか?





15歳、事件の始まり。





「何コレ、どーゆー遠足?」

「これが、遠足に見えるのか君は」




車には金色狼と銀色さん、そして初めましての男性一人。

ひらひらと手を振りつついつもの調子で問いかけると、仏頂面の男性に突っ掛かれた。




「失礼、ミスタ。でもあたし何も説明を戴いてません」




これじゃあまるで誘拐ですわと笑うと仏頂面が更に激しくなった。

てゆーかどちら様?

ガッシリ系の四十ぐらいの弄りやすそうな男性だ。

はて?もしかして?




「あなたも何も感じなかったんですか?」

「ドミの事だ、てっきり知ってるのかと思ったぞ?」

「え?何の事銀色さん?それとリィ、いくらあたしでも夜中に叩き起こされただけじゃ何が何だか」




首を竦めると軽く金銀天使が説明してくれた。

つまり、怪獣夫婦からの突然のSOSについでリィの感じない原因不明の悪寒、ここにいない天使。

とまあ、彼らにもよく分かっていないのが現状らしい。

ちりりと何かが脳を掠める。

何か大変な事がなかったか?




「そんな訳で船長がアーサーが病気なんて言い出すからドミも来ないとおかしいだろう?」

「しょうがないだろう!他に言い様がなかったんだ!」




なるほど、転入の弊害がここに出たか、と思いつつ記憶を探るが思い当たらない。

可笑しい。

ここのところの平和ボケが原因か。




「本当に誘拐だったんですか?ミスタ」

「違う!・・・・私は、ダン・マクスウェル船長だ」

「ドミューシア・ヴァレンタインです。弟たちがお世話になっております」




自身の焦燥感は置いといて、ここ最近何回か繰り返した挨拶を口にする。

この人がかの有名な怪獣夫婦の息子さんか。

にこっと笑ってマジっと見つめてみた。

うんうんうん、びっくりするぐらい普通の人だ。




「で、今はどこに?」

「デモンに会いに学校へ向かってる」




ルーファに何かあった事は確かなんだ、と眉を寄せる金色狼。

ちりりと、また何かが過る。

何だった?

あたしは何を忘れてる?

考えても答えは出ない。




「えーと、デモンってのは?」 

「ラー族の繋ぎ役だ」




  ・・・・・・・・・・・・。




「うわっすっごい嫌!!」 

「我慢しろ!」



促した質問で思わぬ本音が出て金色狼に怒られました。

我が儘を言った自覚はあります。

が、嫌なもんは嫌だ。

今まで一生懸命ラーにだけは関わらず生きてきたのに、ここに来てなんて酷い!

思わず下唇をつき出す。




「何がそんなに嫌なんです?お会いになった事が?」

「ないけど・・・・」




きょとんっとした銀色さんの顔を見ながら渋々口を開く。




「あたしが人生で一番信用してない一派だから。てゆーかラスボスだもんあの辺」

「らすぼす?」




何その可愛い発音。




「すっごい嫌いってことー」




思い出した。

デモンってアレだ、確か浅黒い男性描写のパイプ役の人。

社会とラーの中間に立つ男。

もういい、あたしが会いに行かなきゃいいんだ。

車に引きこもっていれば安全だろう。




「おや、君が導きの星の彼女か」




そう思ったあたしが甘かった。

怨めしく二人を見るが金色は素知らぬ顔だし、銀色さんは申し訳なさそうな顔を しているだけだ。

船長に至っては話について来てもいない。




「はじめまして、」

「申し訳ないけれど自己紹介は結構よ、ミスタ」




失礼だとは知りつつも彼の言葉を遮る。




「二度とお会いするつもりも、懇意になるつもりもありません」

「嫌われたものですね」




苦笑の似合う紳士だ。

個人的に恨みがあるわけではない。

何しろ初対面なのだ。

それでも嫌だ。

生理的嫌悪と言っても良いのかもしれない。




「あたしは力のない一般市民ですから。あなた方を恐れて当然でしょう?」

「とても恐れているようには見えませんが、まあいいでしょう。導きの星がいればルウも安定するかもしれない」




そのまま話は天使の話題に戻り、あたしは静かに口をつぐんでいた。

言ってやりたいけど、言うわけにもいかない。




(うちの子たちに手を出すような連中と誰が仲良くするもんですか!)

金色狼も、銀色さんも、天使も、基本的にうちの子です。





デモンには完全な八つ当たりです。

ってゆーか、一年ぶりの更新て!

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