お昼、食堂にて、
 
 
 
 
「あ、ドミ」
 
「リィ、シェラ!久しぶり、学校は慣れた?」
 
「まあまあかな」
 
「ええ、何とか」
 
「目指せ一般市民はうまくいってる?」
 
「ああ、まあ、うん、」
 
「ええ、まあ、多分、」
 
「え、何その歯切れの悪さ」
 
 

そんな会話をした午後だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

15歳、町でのこと。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
何でこんな事になった。
 
 
腕にある本と毛糸を抱え直し、ため息をつく。
 
あれだ、きっと星占いが最下位で、買い物なんてもっての他今日は一日部屋で布団を被って丸くなるのがお似合いです、なんてどっかの星のブラックなお天気お姉さんに嘲笑われているんだ、きっと。
 
 
 
 
 
「さ、オレとお茶でもどう?」
 
 
 
 
 
ため息の種は艶やかに笑う。
 
足元に男三人を転がして、
 
 
 
 
 
「お嬢さん?」
 
 
 
 
 
現実逃避をしても無駄なのだ。
 
何かもーこういう星回りなのかもしれない。
 
あたしは思わず天を仰いだ。
 
 
 
 
 
「ジーザス・・・・!」
 
 
 
 
 
一難去ってまた一難とはこの事だ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
時刻は数時間前に遡る。
 
 
 
 
 
「・・・・、最高!」
 
 
 
 
 
相変わらず、ぼっち更新中、でもなく何となく黒すけさんと交流をしながら(といっても図書館で対面して延々と本を読むだけなのだが)完全インドア派として過ごしていたのだが、
 
今日は初めての町に出てみた。
 
転入して二週間以上たつが図書館に篭っていたままで外に出た事がないと銀色さんを見て思い出した。
 
何かほら、編み物してなかった?
 
毛糸買ってくるからあたしにも何か作ってください、マジで。
 
そんな訳で財布と携帯端末を片手に町に繰り出したのだ。
 
 
 
 
 
「ヤバイ、スゴい、何コレ全然読めない!」
 
 
 
 
 
毛糸を探しに町に出たのだ。
 
目的のものはすぐに見つかった。
 
橙と白の入ったシンプルで可愛い毛糸。
 
これでマフラーとかセーターとかあたしは出来ないけど銀色さんの暇潰しにでも、とあっさり見つかった。
 
後は、リィの毛糸はやっぱり赤か、とかレース編み最高とかやっていたはずだ。
 
 
 
 
 
「やっべ、涎でる」
 
 
 
 
 
なのにそれがいつの間にか、手には本が乗っていた。
 
人生の七不思議だと思う。
 
気付いたら本屋にいた。
 
気付いたら二時間過ぎていた。
 
よくある、よくある、むしろ二時間でよく気づいたあたし。
 
とりあえず涎をふき、心引かれる古書を購入し外へ出た。
 
昼に出たのでまだ外は明るい。
 
それでも門限のある身だ、なるべく早く帰ろうってゆーか早くこれ読みたい、つか何語コレ。
 
最高にウキウキしていた時だった。
 
 
 
 
 
「君、ドミューシア・ヴァレンタインかい?」
 
 
 
 
 
突然名前が聞こえたので、反射的に振り返りすぐに思った。
 
しまった。
 
 
 
 
 
「ドミューシア・ヴァレンタインだな?」
 
 
 
 
 
後ろにはスーツを着た三人の男。
 
サングラスをしてないのが不思議なくらいのスーツの男たち。
 
 
 
 
 
「違いますけど、」
 
 
 
 
 
そう答え、抱えた本と毛糸を抱え直しながら携帯端末を触った。
 
これで引き返すならよし、駄目なら警察沙汰だ。
 
あんなだがアーサーは州知事だ。
 
当然家は金持ちだ。
 
金色狼だけがあたしの心配の種ではなかったのだ。
 
ここのところ色々な事があって忘れていた。
 
知らない声に名前呼ばれたって絶対振り向かなかったのに、どれだけ気を抜いていたのか。
 
自分の迂闊さに舌を打つ。
 
 
 
 
 
「一緒に来てもらおうか」
 
「だから人違いよ」
 
 
 
 
 
そっと辺りを見渡すが残念ながらここは人通りの少ない裏通り。
 
本に引かれたとはいえ何でこんなとこ来ちゃったかなあたし!
 
躊躇わず携帯端末のボタンを押す。
 
ビービービービー!!!
 
 
 
 
 
「ちっ!」
 
「このガキ!」
 
「そのガキ捕まえてどうするつもりよ、変態!!」
 
 
 
 
 
大音量で流れた警告音。
 
うちの携帯端末は特別製で、警察への直通のボタンがある。
 
しかし後は警察が来るのを待つしかなく、その間に捕まったら元も子もない。
 
顔色を変えた男たちを背に脱兎の如く走り出す。
 
 
 
 
 
「ぐっ、」
 
「うぁ!」
 
「ぐあ!」
 
 
 
 
 
はずだった。
 
 
 
 
 
「女一人に何やってんだ、情けねぇなあ」
 
 
 
 
 
突然の呻き声と艶やかな声に振り返れば、倒れた男たちの上に美青年が一人。
 
これ何て乙女ゲー?
 
 
 
 
 
「あ、りがと、う」
 
「さ、オレとお茶でもどうだい、お嬢さん?」
 
「お断りします」
 
 
 
 
 
何かこんな事前もあったなと目を細目ながらお礼と断りを告げる。
 
あ、警報切ろう。
 
ついでに警察に不審者の報告をして携帯端末を切る。
 
 
 
 
 
「・・・・・・・・」
 
 
 
 
 
その間何故か物凄くガン見された。
 
すんごいニヤニヤしながら、
 
視線が痛い。
 
 
 
 
 
「・・・・えーと、助かりました、ありがとう」
 
「いや、大した事じゃねぇよ」
 
 
 
 
 
答えながらも美青年は視線を外さないしニヤニヤも止めない。
 
 
 
 
 
「・・・・・・・・そんなに見ても何にも出ないわよ」
 
 
 
 
 
本当にお茶したい訳でもないんでしょ?とため息混じりに伝えるとニヤニヤが酷くなった。
 
チェシャ猫か!
 
 
 
 
 
「あんただろ?最近黒いのを口説き落とした女って」
 
「え、そっちでも有名なの?」
 
「当たりか」
 
 
 
 
 
口笛を吹かれる。
 
あーもー勘弁してくれ、これ以上噂はいらん。
 
 
 
 
 
「口説いてないわ、図書館仲間よ」
 
「そんで、王妃の姉御って訳か」
 
「うちの妹は王妃様じゃないわ」
 
 
 
 
 
王妃なのは上の弟だ。
 
素知らぬ顔で返せば一瞬きょとんとした後に噴き出された。
 
そしてぷるぷる笑われる。
 
 
 
 
 
「なるほど、なるほど!いいねぇ!噂通りの変な女だ!」
 
「誉めてないって気づいてるわよね?」
 
 
 
 
 
ため息をついて踵を返す。
 
後は警察に任せて帰って寝よう、何か疲れた。
 
 
 
 
 
「まあまあまあまあ!せっかくだ、本当にお茶でもどうだい?」
 
「こんな怖いことがあったのにお茶なんか飲めないわ」
 
「よく言うぜ!冷静沈着だったろ?」
 
「ふりよ、ふり。膝が笑ってたわ」
 
「ぶはっ!」
 
「何、笑い上戸なの?」
 
「あんたが笑わせてんだよ!」
 
 
 
 
 
漫才のような掛け合いをしながら表通りに出る。
 
諦めよう、今日はこういう日なのだ。
 
 
 
 
 
「オレはレティシア・ファロット、あんたは?」
 
「ドミューシア・ヴァレンタインよ」
 
 
 
 
 

「よろしく、猫すけさん」
 
 
 
「別によろしくしてくれなくてもいいけど、」
 
「言うねぇ!気に入ったぜ、あんた」
 
「えー」
 
「ぶはっ!」
 
 
 
 
 
 
 

おまけ
 
 

次の日、食堂にて、
 
 
 
 
「「「ドミ!!」」」
 
「あれ?三人とも何?血相変えて、」
 
「襲われたって!?」
 
「あ、うん、」
 
「大丈夫なのか!?」
 
「だいじょーぶ、」
 
「あの男に会ったって!何もされませんでしたか!?」
 
「お茶飲んで帰りました」
 
「なんて無防備な!!」
 
「いや、何かしつこくて、」
 
「・・・・殺す」
 
「ちょ、落ち着いて銀色さん!」
 
「それよりドミ、襲った奴らの顔分かるか?」
 
「(それより?)わかんない、猫すけさんに聞いて」
 
「よし、ヴァンツァーも呼ぼう」
 
「え?何か物騒な話?」
 
「ドミの携帯端末貸して?」
 
「え?いいけど?」
 
「警報がなったら僕にも分かるようにしといたから」
 
「・・・・いいけど、みんな何か過保護じゃない?」
 
「「「普通だ(よ)(です)」」」
 
「・・・・そうかなぁ?」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
あれ、何か扱い酷いな?(笑)
別にドミも私も猫すけさんが嫌いじゃありませんよ!
ただ、ちょっとリアクションに困るってゆーか、イケメン嫌いの血が騒ぐってゆーか、ヤ、嫌いじゃないですったら!(笑)
そして、またおまけという裏技を・・・・
書ききれなかったんですよう!思ったより話が膨らんだんですよう
町やめて学校でとか、誘拐じゃなくていじめ、しつこいナンパ、とかいろいろ考えましたが、これが一番するっと妄想できたのでこれで。
 
完全に三人が過保護です。多分、残りの二人もです。
何ででしょうね?結構どんくさいからですかね?
本人しっかりしてるつもりで抜けてます。
友情応援のコメントいただいたので友情物で進みます♪
このサイトにも一本ぐらい友情物があっても良いでしょう(笑)
 
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