寝苦しさに目を覚ました深夜過ぎ、
誰かに見られている・・・・
そんな妄想とも言える気配を感じとって薄目を開くと、
「貴女が、星の人?」
目の前にはとっておきの美少女、の首だけ。
「○*◆@☆&▲※#!!!」
初めて口から宇宙語が飛び出した瞬間だった。
25歳、真夜中のこと。
「そんなに驚く事かしら?」
「・・・・口から心臓が出るかと思いました」
王妃は全く驚かなかったのに、と宣う美少女(首だけ)に反論する元気はない。
やめて、金色狼と一緒にするのマジでやめて。
「こうして見ても普通の人間と変わりないわね?」
「普通ですから」
「普通の人間は儂らとここまで話はできまいて」
「いや、普通ですから」
新たな声へ返事をしながら顔を向けるとバストアップのセクシー美女と顔からして好好爺とは言いづらいお爺さん。
まあ、この人たちトリオだからね。
「あら、もう驚かないのね?」
「しまった!驚き損ねた!っ?」
くそう、変なフラグたった気がする。
というか、こっち来てからこんなんばっかだ。
「で、何しに来たんですか?」
こうなりゃ自棄だ。
月が隠れたのか新月なのか、ともかく暗い部屋で一人聖霊トリオと向き合う。
頼むから変な予言じゃありませんように。
「いや何、お主に興味があっての」
お爺さんが元々鋭い目を更に尖らせた。
「お前さんは闇について行かなくて良かったのか?」
そう、一人。
王宮の皆さんに嫌な噂を立てられようとも離れようとしなかった天使から離れて私は一人、王宮に残っていた。
といっても用心のため子栗鼠さんのお宅にお邪魔してるが。
「私が行って何になるのさ」
上げた口の端は少しだけ自嘲気味に見えたかもしれない。
天使も王様も金色狼を助ける為に戦地へ向かった。
私が行って何になる。
下手をすれば怪我をして破傷風。敵に捕まり人質。
流れ矢にて死亡。
思い詰めなくても足手まといな事は十分に分かる。
二十五年間も十六年も平和な世界に産まれて戦争など耐えられる訳がない。
トイレが水洗じゃないだけで力尽きそうな私が戦地へ行けるか否か。
「下手に着いていって邪魔するよりここにいる方がみんな安心だよ」
我が身が一番。
それが何より金色狼の為になる。
だってあの子は優しいから。
「用心し過ぎかもしれないけど、しない馬鹿よかマシでしょう」
イレギュラーには何が起こるかわからない。
足手まといは御免だよ、と片頬をあげてみせると聖霊トリオは三者三様物珍しそうに笑った。
「やはり、珍しい人間のようだの星の方」
「その認識が一番困るんですけど、聖霊の方々」
思わず肩を落とす。
何コレなんのフラグ?
天使といい聖霊トリオといい、いらないからね普通じゃない人フラグとか、本当にいらないからね!
どうぞどうぞもいらないよ!
「そろそろ太陽たちが戻ってくる頃よ」
凹んだ私を憐れに思ったのか美女がそっと頭を撫でてくれた。
どんな仕掛けかわからないがいい匂いがする気がする。
「あ〜あ!せっかくレティーと一緒にいれると思ったのに!」
私を置いてぶつくさ言う首だけ美少女が伸びをするようにくるりと回った。
彼女の向こうで空がうっすらと薄紫に変わる。
「刻限のようだの」
闇のケンゾクであるらしい彼らの眠る時間。
いや、本当に寝る訳じゃないと思うけど。
「ではね、星の方」
「ヤ、だから星じゃないんで」
そんなに話していたつもりもなかったが空が白々と明けてきたということは、何処かでもう女官たちは働き出している事だろう。
「無限の刻、また出逢う事もあろう」
「じゃあね、星の人。レティーをよろしく」
「猫すけさん会ったこともないんですけど・・・・」
私の呟きは虚しく朝の空気にとけていく。
「なんだったんだ、一体・・・・」
さわさわと人が動く気配を感じる。
何時か知らないがこの時代の人は働き者だ。
働き者でなく現代っ子な私はやれやれと布団に潜り込んだ。
金色狼が戻ってくる、
その言葉に、
歓びと、
小さな不安を抱えながら。