デルフィニアに落ちて一週間が過ぎた頃、

 

待ちに待った一報が届いた。

 

 

 

 

二十五歳 天使との再開。

 

 

 

 

バタバタと走る。

途中女官長殿に怒られたので数歩歩いたが、やっぱりバタバタ走る事になった。

歩いてなんかいられるか!

 

 

「王様!!」

 

 

謁見の間の兵士さんたちへの挨拶も適当に中に突っ込む。

ここに騎士団長やら初老の将軍なんかがいたら大目玉な行為だが幸いなことに怒鳴り声を上げる人物はいない。

その代わりそこにいた何人かが目を見開き驚いていたようだが無視だ、無視。

それに構っている余裕はない。

 

 

「おお、ドミューシア殿。今お主の話をしていたところだ」

 

 

毎度の如く朗らかに笑う王様。

その前に、ボロボロの服、というかむしろ布を纏った、美しい人。

襤褸を着れば、より彼の美しさが際立つ。

 


長く艶やかな黒髪も、

白く艶かしい肌も、

蠱惑的な瞳も、

誘う唇も、

 

それは彼に違いない。

あたしは彼ほど美しく、深い闇を知らない。

 

 

「え?ドミューシアって・・・・?」

「てんしぃぃーっ!!!」

 

 

そのままガバッと抱き着いた。

 

 

「わっ!」

 

 

勢いに負けて転がった天使に上に股がるあたし。

いつぞやの逆だ。

 

 

「おっそい!おっそい!おっそい!!あたしがどんだけ待ったと思ってんのよーーー!!!」

「え?え?え?」

 

 

目を白黒させる天使に容赦なくあたしは胸ぐらを掴み心情を訴える。

 

 

「大体あたしのような一般市民を巻き込まないでよ!って巻き込むならもっと上手に巻き込みな!」

 

 

一人放置禁止!と半泣きで喚くところで漸く何か合点がいったのか、まじまじとあたしの顔を見つめた。

 

 

「あれぇ?本当にドミューシア?」

「えぇ、天使の髪の毛に絡まって一緒来ちゃったドミューシア・ヴァレンタインですが何か?」

 

 

ぷくうっと頬を膨らませ拗ねて気付く。

ドミューシアがやったんならともかく二十五越えた女がやってもイタイだけだ。

 

 

「わー!えー!本当に?どうしちゃったのドミ!」

「そんなんこっちが聞きたいわ!」

 

 

えーやだーとか言いそうな天使にいらっとして髪を引っ張る。

JKか貴様!

 

 

「大体!来るなら一緒にここまで来ればいいものを、天使は一人迷子だし!あたし一人王様の膝の上だし!!」

 

 

死ぬかと思ったわ!と持った髪をぎゅーぎゅー引っ張る。

 

 

「いた!いたたた!痛いよドミ!」

「みんな怖いし知らない人ばっかで、ぎゅーぎゅー押さえるし痛いし剣光ってるし!」

「う、うん、ドミお願い手離して・・・・」

「それに体変わってるし訳わかんないしみんな物珍しそうに見るしよう!!」

 

 

すっごいすっごい大変だったんだから!と半泣きどころかマジ泣きだ。

ドミューシアの幼少期でもやったことないような駄々っ子だ。

自覚はあるが収まらない。

ぽろぽろ涙を溢しながら胸元にしがみつくと天使にぽんぽんと背中を撫でられた。

 

 

「ごめんね、ドミューシア。まさかドミまでこっちに来てるとは思わなかったんだ」

「うううう、いぃいーよぉお」

 

 

鼻を啜ると、ついでに天使のいい匂いがする。

すげぇ、お風呂入ってないんじゃなかったっけ?

 

 

「良かったな、ドミューシア殿」

 

 

ひとしきり喚いて気がすんだあたしに微笑ましそうに王様が笑った。

 

 

「本当はドミューシア殿にルウ殿を確認して貰おうと思ったんだが、十分のようだな」

「は!ごめんなさい王様!」

 

 

決して今までの対応に不満があったわけではなく!と弁解に向かおうと立ち上がると、同じく立ち上がった天使に手を引かれた。

 

 

「ねぇドミ、これどうしたの?」

 

 

手を添えられたのは頬。

 

 

「え?」

「この傷、どうしたの?」

「これはみんなにぎゅーぎゅー押さえられたと、き、に・・・・」

 

 

黒い。

ヤバい。

マズい。

顔がひきつる。

 

 

「へぇ、女の子の顔に傷付けたんだ」

 

 

天使の髪がざわりと動き出す。

部屋の中がほの暗くなる。

くる!きっとくる!!

 

 

「武器も持ってない女の子一人に、その扱いはないんじゃない?」

 

 

その時を力を使って見たんだろう。

天使が黒く怪しく笑う。

 

 

「っ!これは!?ルウ殿!ドミューシア殿!?」

 

 

慌てた王様と兵士たちの声が聞こえる。

腹を括ろう。

何とか出来るのはあたしだけだ。

 

 

「わさわさ、やめーっ!!!」

 

 

精一杯腕を伸ばし、天使の頭の上から両腕を輪にしてずぼんっと髪を押さえる。

ついでにぎゅっと抱き着くと先程より濃い花の匂い。

何とも蠱惑的だ。

 

 

「い・い・の!」

「ドミ・・・・」

「そもそも悪いのは誰っ!?あたし放り出したルウでしょ!!王様たちはびっくりしたからしょうがないの!」

「でも、」

「でももヘチマも案山子もない!!」

 

 

ぎゅっと抱き着きながら顔を見上げる。

ドミューシアよりも少し小さいこの体はやたら保護欲を高めるのかもしれない。

てゆーか二十五も過ぎると傷の治りが遅いのですよ。

本当に頬にあるのは小さな擦り傷だけだ。

あたしも忘れていたぐらいの小さなもの。

金色狼の過保護が移ったんじゃないだろうか?

 

 

「もういいの!だからわさわさやめて暗いのもやめて!」

「・・・・」

「や・め・て!!」

「ドミに怒られた・・・・」

「怒りますがな!びっくりするわ!」

 

 

王様に頭を下げ天使の手を引っ張り退室する。

まずは天使をお風呂に入れねばなるまい。

 

 


「全く、手のかかる弟が増えた」

 

「ぼくの方がお兄さんでしょ?」

「どっちでもいいわ!でも・・・・会えて、良かった」

「ドミ?」

「・・・・あたしに、気付いてくれてありがとう、ルウ」

「どういたしまして、ドミューシアが無事で良かったよ」

 
 
 
 
 
 
 
 
でももヘチマも案山子もありません。
あんまりにもおばあちゃんみたいで好きです(笑)
私も忘れているようなほっぺたの傷を覚えているのが天使。
ヴラァーボウ!
後は金色狼がどんな反応をするのか怖くてたまりません(笑)
それまでには傷は治っていて欲しい!
でもきっと天使が告げ口して夫婦喧嘩になってドミが半泣きで止めるんだろうなとか思うとうふうふします。
早く金色狼に会いたいですなぁ。そして銀色さんをいじりたいですなぁ、
と原作を読み返すもなかなか大変な事になっているのでどうかかわるのかお姉ちゃん。
完全傍観者になっていそうな気もします。
それもまた良し!←
 
 

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