そしてそのまま、
半年が過ぎた。
13歳のこと。
「ねぇ!ドミ!ちょっと!!」
あたしは中等部に上がった。
背中を覆う栗毛は一本の三つ編みで流し、服装は小学校の時と同じく動きやすいパンツスタイル。
この国には制服がないので気分的に変わった感じがしない。
まあ中学生になろうが高校生になろうが子どもには違いないのだが。
「ちょっと見てったら!」
勉強をが難しくなるのは百も承知だったので問題なし。
しいていえば社会情勢があまりにも違うのが現在の赤点候補だ。
「ねぇ!!ドミューシア!もう無視しないでったら!」
たまたま一緒に下校していたクラスメイトが更にテンションを上げ腕に掴みかかる。
中学生のテンションの高さにもついていけないあたしは、諦めて読んでいた本から顔を上げた。
因みに読んでいたのは頭の痛い世界史、というか宇宙史。
やっとクーアの名前が出てきて面白くなったところだったのに。
「はいはい、ごめんごめん。何?」
「ちょ!も!いいからアレ見て!アレ!!」
大興奮で指差す方に目を向ければ道の角にふたつの人影。
人に指差すんじゃありません、と言おうとして口が固まった。
流れる黒髪と輝く金糸。
あれから、一度も姿を見せなかった二人。
「ねっねっねっ!すっごいでしょ!!すっごい美人〜!!」
クラスメイトの声が耳を素通りする。
蒼と翡翠の瞳があたしを捕らえた。
きっとあたしは酷い顔をしている。
鏡なんか見なくても、困ったように笑う彼らの表情で分かる。
「・・・・リィ、」
「えっえっえっ!知り合いっ!?」
「っ、弟っ!!」
そう言い捨ててあたしは走り出した。
周囲のざわめきは耳に入らない。
「リィ!!」
「ドミ、久しぶ、り」
その勢いのまま金色狼を抱き締めた。
「・・・・リィっ」
柔らかな金の髪。
さらりとした肌。
しなやかでほっそりとした手足。
草と日向の匂い。
「ドミ?」
この瞳を、
この顔を、
この肌を、
この腕を、
この足を、
「ドミューシア?」
ぎゅっと力を込めた。
傷は見当たらない。
ちゃんと生きている。
ちゃんと動いている。
でも、
それでも、
「ドミューシア、どう」
「もちろん、」
金色狼の声を遮って、ゆっくりと天使を見た。
自分の内臓がぞわりと持ち上がるのが分かった。
毛穴が広がり髪が持ち上がるような感覚。
これはアレだ。
「全員、始末してきたんでしょうね・・・・?」
腸が煮え繰り返るってやつだ。
「ドミューシア、すっごい怖いよ?」
「どうなの?」
「ちゃんとオトシマエつけてきたよ」
「地獄を見せてきたなら良し」
「・・・・ドミ苦しい。後、めちゃくちゃ目立ってるから」
「げっ!あたしの平穏な学校生活おじゃんっ!?」