報道番組がセンセーショナルにケリー・クーアの訃報を告げ、
金色狼が義父の死を呟き、姿を消した。
あたしも、動かなきゃいけない。
11歳のこと。
「・・・・ふぅ」
何度も気合いを入れて、何度もためらった。
指が震える。
ここで息を吸ったり吐いたり、番号押したり消したりを小一時間。
ええい!好きな子に電話できない中学生か!
って、まだその年齢に達してもいないんだけど。
「う〜!!」
そろそろ戸惑っている状態に飽きるというもの。
しかし、でも、果たして、やっぱり、もしかして、
「って何回繰り返す気だ!」
行ったり来たりする指先に、自分の事ながらイライラの限界がきた。
「ええいっ!女は度胸!!」
震える指先が初めてコールを押した。
接続中を画面が示す。
ヤバイ。
ワン切りしそう。
勢いで生きててすみません。
人生二度目でも変わりません。
結構行き当たりばったりですんません。
プチパニックになりつつ、鼻の頭に溜まった脂を指で拭う。
「あれ?ドミューシア?」
「ひ、久しぶり、です」
ぱっと画面に現れた漆黒の天使に顔が引きつる。
大丈夫!ドミューシアまあまあ可愛いから!!
「どうしたの?ぼくに電話なんて初めてじゃない」
アーサーに怒られるよ?と微笑む天使はそらもーとんでもなく美しいんだけども、アーサーが怒るのは貴方のせいですからね?
「それで、どうしたの?」
「あの、相談があるの!」
「相談?」
小首を傾げる天使は思わず鼻血が出そうなほど可愛い。
でもって美しい。
あたしに至ってはこめかみに嫌な汗が伝い、口の端は更に引きつっている事だろう。
大丈夫!ドミューシアまあまあ可愛いから!!ってこれ二回目か。
「そう、人生の!!」
あ、混乱した末おかしな事言った。
「人生相談を、ぼくに?」
天使が目を剥くなんて表情は滅多に見られないと思います。
それでも美しいんだけどね。
「そう、人生相談!凄く悩んでるの。死活問題なのよ」
「それ、ぼくでいいの?死活問題なのに?」
「もちろん、貴方じゃなきゃ駄目なの」
しゃべっている間に少し落ち着いてきた。
詰めていた息を吐いて呼吸を正す。
「だから、何処かで会えない?」
基本、この世界でプライバシーは守られない。
その考えは変わらない。
普通に生きていくのには問題はないが、如何せんこの道は茨。
用心しすぎる事はない。
「できれば、貴方の家に行きたい」
この、画面の向こうまで、あたしの決意は伝わるだろうか?
「いいよ」
少し考えて、天使は笑顔を浮かべた。
その後、でも、と続け言いにくそうに口を開いた。
「遠いよ?」
「か、考えてなかったっっっ!!!」
(遠いって、どれくらい・・・・?)
(う〜ん、普通の船で三日かなあ?)
(って宇宙っ!?)