風に吹かれる栗色の髪の先を眺め、
ドミューシアについて考えた。
九歳のこと。
「ドミちゃんかみの毛のびたね〜」
ある日、クラスメートが他愛なくそう言った。
ドミちゃんと呼ばれるとどこぞの猫型ロボットの妹を思い出すからやめて下さい。
個人的には海に捨てて〜!って言って欲しい。
「きれいだよね〜」
二人の女の子に囲まれてきゃいきゃいと髪を弄られる。
脳が飛んでるのも日常茶飯事なので気にしない、気にしない。
あ、リボンはお止めくださいお嬢様方。
ちょっと精神年齢的に痛いんです!
「うん、伸びたなあ・・・・」
肩を過ぎた辺りまで伸びた髪は、マーガレット譲りの栗色でふわふわと柔らかい。
絡まって結びづらいんじゃと思いきや、クラスメート二人はウキウキと飾り立てている。
「ドミちゃんお団子かわいい〜!」
「にあう〜!!」
「うん、何でもいいや〜」
一年生の時には余裕が無さすぎて友達ゼロ人キャンペーンだったが、そこそこ仲の良いクラスメートというものもできた。
何が面白いのか良くなついてくれる数名の女子。
なんでしょう?
オカン臭でも出てますか?
「そんなんぜんぜんにあわねーよ!ブスのくせに!」
もちろんクラスには構ってもらいたい盛りの男子諸君もいるわけで、
「うん、あたしより背が高くなってから文句いいな、おチビさん」
慌てず騒がずペースは常に俺のターン!
ちょっと何かの作品混ざりました。
大人気ない?
何をおっしゃる、対等に関わってるんですよ。
く〜!地団駄を踏む男子と何故かうっとりと熱い視線を送る女子を尻目に、あたしはそっと髪を触った。
「髪、伸びたなあ・・・・」
原作のドミューシアは短髪にボーイッシュでロッドを好む活発で外向的な少女だった。
それに比べあたしはといえば、伸びた髪(無精髭ならぬ不精髪だ)に、服は露出もフリルも勘弁なのでシンプルなパンツスタイル(否、小学生らくし長ズボン)
走り回る事は滅多になく、ロッドは大の苦手だ(だって小学生と打ち合うのだ。物凄くやりにくいし、体ではなく精神が堕落しているため運動は全て面倒なのだ)
常に本を手にし人とほとんど関わらない(自分の子どものような年齢の同級生とは友情は非常に芽生えにくい。会話になるか!んなもん)
原作を知っている人なら本当にドミューシアかと疑いたくなるだろう。
「むしろあたしが疑うな。完全に別人だ」
自室で日課になった日記を捲り書き綴る。
未だ日本語を忘れず書き連ねられた自分にしか読めない日記。
「いや、あの彼女なら読めるかも」
金髪碧眼の美しい宇宙船の彼女。
上手く出会える時があれば地球の行方を聞いてみたい。
「あるのか?パターンとすれば大昔に失われた惑星か、地球人がまだ宇宙進出出来ていないだけか」
まあ、後者の線は限りなく薄いか。
ペンを取り文字を綴る。
「わざわざこれからボーイッシュを演じるつもりは毛頭ない。あたしはあたしでしかない」
ドミューシアという彼女をあたしが奪ったのではないかという恐怖はあったが、結局ここまでくると平行世界という言葉が似合うだろう。
「何処かの誰かがあたしに使命を与えに来る事もなさそうだ」
ロール・プレイング・ゲームの王道だ。
「無論、来たところでスルースキル発動だが」
今、あたしに出来る事といえば、
「弟との感動の再会を今か今かと待つだけだ」
(忘れてないでしょうね、天使さんよ)
(ちっ!ケーバンでもなんでも聞き出しときゃよかった)