「あ、」
ふと、テレビで流れた光景に何とはなしに目が止まった。
「そうだ、遊園地に行こう」
八歳のこと。
読みかけの絵本をパタンと閉じる。
栞は必要ない。
数えるほどしかページはないし、何より内容は全て覚えている。
新しい勉強方法だ。
あの月夜以来、少し、勉強方法を変えた。
読みたい本を読む。
それはまずは絵本から始まり、簡単な児童書、漫画、小説と続く。
今は漫画ぐらいなら何とかいける。
書き取りは読んだ本書き写す。
それも児童書の低学年レベルなら大体書けるようになった。
探すんだ。
やりたい事とやれる事。
「ゆーえんちー?」
「えんちー?」
隣で玩具のブロックを破壊させる遊びに勤しんでいたチェインと大人しく人形を構っていたデイジーが興味津々といった様子で近づいてきた。
「そう、遊園地。飛行機もあるし、ぬいぐるみもいるし、ロボットもいるし、お姫様もいるし、ふわふわもある」
本当にあるかは知らない。
予測だ、予測。
遊園地になくてどこにあるというのだ。
生前、某ネズミー王国で人間サイズの七人の小人を見てえらくドン引きしたのは今となってはいい思い出だ。
それに、ふわふわと言えばアレだ。
現代で言えばトランポリンやら中に入れる巨大な恐竜の風船やらだが、ここでも一緒かなあ。
「いく!」
「くー!」
そんな適当な姉の言葉に幼い弟と妹は目を輝かせた。
「よし、パパにお願いしよう!」
「うん!」
「パーパぁ〜」
さあ行けチェイン!デイジー!君たちに決めた!!
とてて、と幼児特有の危なっかしい歩みでマーガレットの元へ向かう二人。
おそらくアーサーには電話、というにはあまりにもハイテク過ぎて目が回りそうなエスエフエックスによくある、アレで連絡をとるだろう。
「よし、まあ年内中には行けるでしょ」
あの時からつけている何冊目かの日記を取り出す。
デイジーが生まれて二年たった。
「もうそろそろだったと思うんだけどな〜」
細かい年数は覚えているもんか。
「確か、三兄弟はそろってたはず。んで妹は小さめ、なはず」
ここで八年。
「クラブレ出てたもんな〜」
ドミ登場なんて何年前に読んだのやら。
つまり、
「姉の威信はゲットしておかないと」
遊園地イベントあったなあと思い出した、ということだ。
(銀色さんに教えるのはあたしだ!)
(今のうちに無重力練習しておかないと出来る気がしない)