デイジー・ローズが生まれた。

しかし、すんごい名前。

 

 

 

 六歳のこと。 

 

 

「こら!チェイン!デイジーいじめないの!」

 


ほえほえと力なく泣き声をあげる赤ん坊を抱き上げ、二歳になった弟を叱る。

気分は姉でなく母親だ。

 


「だって〜」

「だってじゃないの」

 


子育てにも慣れた。

というか、子育ての方がなんぼか楽だ。

できればずっと子育てして家事やってたまにパートに出たりしたい。

普通のお母さんになりたい。

 


「ドミ〜?時間よ?」

 


来たっ!

 


「うっ、おなかがっ!!」

「嘘はダメよ。ドミューシア」

「だって〜」

 


流石に毎日やればのほほんマーガレットにも分かるか。

行きたくない。

行きたくない。

行きたくない。

 


「さあ、小学校に行くわよ」

 


何が悲しくて三十過ぎて小学校で勉強しなくちゃいけないんだー!!

誰にも言えない虚しい叫びが木霊した。

 

 


(いや、木霊はしない。気分だけ、気分)   

(バレちゃ不味いでしょうよ。色々ね。いろいろ)

 

 

 

***

 

 

 

 


愕然とする。

ちょっと待ってよ!

共通国語ってこんなに難しいのっ!?

 

 

 

 

六歳、勉強する。 

 

 

 

「皆さん、おはようございま〜す!」

 


明るく優しく元気よく挨拶をする若い女の先生。

推定23歳。

若っ。

 


「おはよーございますっ!!!」

 


って言ってるつもりなんだろうけど元気が良すぎて何を言ってるのか分からない子どもたち。

その中のひとりはあたし。

って・・・・無理。

すげぇ無理。

テンション合わないよー会話も合わないよー先生とすら合わないよー誰と喋ったらいいんだよー

気分は某ちびっこ名探偵だ。

でも、本当に大変なのは、会話が合わないとかテンションが合わないとかよりも何よりも。

 


「はい、ミス・ヴァレンタイン。これは何と書いてあるか読めますか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぁ゛・・・・・・・・・・・・?」

「はい、もっと大きな声で」

「・・・・わ、わかりません・・・・」

 


屈辱!!

字が読めない!

大人なのに!!

言葉が通じるなら字も読めるし書けるのか普通だろっ!!

あたしをここに連れてきた誰だか知らない誰かに文句をぶつけつつ手元の教科書を見る。

国語の教科書らしき物に英語らしきものが綴ってある。

うんざりだ。

これで精神も子どもなら何だって脳が吸収してくれる。

しかし、こちとら三十オーバー。

もう脳味噌限界です。

おかしい。

脳も若いはずなのに・・・・

 


「ヴァレンタインあんなのもわかんないのかよ〜」

「バッカで〜」

「だまれクソガキむれんなかみころすぞ」

「は、え?」

 


おっと、本音が。

ひきつったクラスメートの顔を見つつ笑顔で誤魔化す。

 


「おべんきょう、ニガテなの」

 


マーガレット譲りのほえほえ笑顔を浮かべつつ、

 


「なにかもんくでも?」

 


しっかりと凍り付かせて教室を出る。

 

 


(友達ゼロ人更新中)

 

(生憎、心の余裕が無いもので)

 

 

 

 

 

ドミ嬢、邪悪化の一途を辿っています。
ヨユウ?なにそれ、美味しいの状態。

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