パーティの喧騒が、


少し、遠い。



バルコニーの上、


殿方と、二人きり。

 


 
うわっ。


何このシチュエーション。

 

 

 

 

 


 

五歳、会話する。

 

 

 

 


 

「少し、外に出るかい?レディ」

 


あたしの天使発言にキングは一瞬目を見開いた後、じっくりとあたしを見つめ、穏やかに手を差し伸べた。
恐らく、あたしの体を機械の瞳で確認したのだろう。
この五歳児の体を事細かに調べ、ダイアナに『ドミューシア・ウ゛ァレンタイン』に付いて調べさせる。
大袈裟な、と思いつつ怪しい自覚はあるので文句は言わない。
もし調子に乗って、やっほーダイアナ元気〜?なんて言ったら即刻『平和にキャラと絡もうの会』は死という形で幕を閉じるだろう。
そういった意味では天使に次いで危ない。
あたしは目一杯オシャマに淑女を振る舞う。

 


「ええ、よろこんで」


「おい!ドミューシア!」


「少し、レディをお借りしますよ?ウ゛ァレンタイン卿」


「え、あっミスター・クーア!?」

 


置いてきぼりのアーサーは置いといて。
あたしとキングは優雅に素敵に、何だかとっても場違いに、バルコニーへと向かった。
ここ、普通は酔い醒ましとか言ってカップルがイチャつく場所だよね?
かなり片寄ったイメージが脳を巡る。

 


「さて、レディ・ドミューシア」

 


キングが渋く男前に笑う。
風が流れ、人工的な光が輝く。

 


「何故、私に天使の話を?」


「ミスタはすごいひとだから、しってるかなっておもったの」

 


ボロは出さない。

 


「だってパパったらひどいのよ?ぜったいいないっていうの!」

 


あたしがあたしである事を伝えるべき人と時はもう決めている。

 


「ねぇミスタ、てんしにあったことは?」

 


それまで、あたしはただの小さなレディだ。

 


「あたしはあるのよ!とってもきれいでまっくろで、よるみたいなかみのけがながくって、おめめがね?よるみたいなてんしなの!」

 


とてとてとキングの足にしがみつく。
コアラ。
膝にすら届かない自分のちみっこさにがっかりするが、今更だ。
むしろキングがでかい。

 


「天使・・・・」

 


実に登りがいがある大木だったが顔が見えない。

 


「それでね、」

 


大きな手がふってくる。
軽々と抱き上げるとバルコニーの縁へと腰掛けさせてくれた。
男前!
しかも落下防止にちゃんと背中に手を起き支えてくれている。
紳士!
息子さんのように蹴鞠にされたら叫びそうでした。

 


「それでね!てんしはおとうとをつれてっちゃったの!」


「弟を?それは・・・・」

 


苦笑に満ちた顔が、また人さらいか天使と告げている。
きっと天使がキングに告げている金色狼の話にリンクしたのだろう。
何とか信じてもらえたかもしれない。

 


「でもパパはぜったいにいないって。あれはまおとこでさいてーだって。そんなわけないのに。パパとママちょーラブラブなんだから!これだからおとこってダメよね!」

 


ぷりぷりと怒ると五歳児にダメ出しされた男子代表七十歳は苦笑を返した。

 


「卿の、いやパパの気持ちも分からんでもないがね」


「ミスタは、パパはなの?」

 


眉をふいと下げると大きな手が頭を撫でた。

 


「男ってのはそんなもんさ。なるほど、ウ゛ァレンタイン卿の息子を誘拐はと・・・・全く、あの天使は・・・・」


「てんし!やっぱりいるよね!てんし!いないなんてウソよねっ?ミスタ!!」

 


思い余って抱きついたりしてみます。
五歳児最高。

 


「そうだな。私は、いると思うよ」


「やったぁ!これでパパにしょーめーできるわ!」

 


にっこにっこ笑うとキングも口の端に笑みを浮かべ、もう一度あたしの頭を撫でた。

 


「その、天使が連れていった弟君に会いたいかい?」


「あいたいわ」

 


即答するとキングはあたしをその腕の上に置いた。
腕抱っこ!
なんという大盤振る舞い!
バランスをとるため思わずキングの頭に掴まる。
いい匂いがします!

 


「私が、天使にお願いしようか?」


「ううん、いい」


「何故だい?」

 


パーティ会場に目をやれば不審者発見。
アーサーだ。
あの人、あたしが嫁にいく時死ぬんじゃなかろうか。

 


「てんしとね、やくそくしたの。きっとおとうとにあわせてねって。だからまってるの」


「そうか・・・・」

 


ハラハラドキドキしているアーサーが目につく。
キングは大分前から気付いていたらしい。
一瞬アーサーを視界に入れると肩を竦めた。

 


「パパが首を長くしてお待ちだ、レディ」


「パパ!」

 


手を振るとパッと顔色が変わり喜んだり慌てたりしている。
何てかわいいお人だ、マイ・ダディ。
アーサーを眺めているとキングがあたしをそっと床に戻した。
戻れ、ということだろう。

 


「ねぇミスタ、またあえる?」


「もちろんだ」


「じゃあ、」

 


あたしはにっこりと微笑む。
五歳児の顔に、三十路過ぎの女の笑顔。

 


「こんどは、おとうとと、あいにくるわ!」

 


次の布石をそっと置いて。

 


「ああ、小さなレディ・ドミューシア」

 


キングの承諾を得て、あたしは満面笑みでアーサーに抱きついた。

 


「ドミ!何か失礼な事は」


「してな〜い!」

 


思うことはただ一つ。



次の出会いゲットだぜ!!

 

(しっかし何年後になるのかしらね?)
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五歳児万歳。
危うくバッドエンドです。
キング祭り終了!早っ
「コアラ・・・・」ネタ分かる人はまず居まい(笑)
スレイヤーズ万歳(笑)

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