それはいつも通りジープに揺られている時だった。
いつも比較的安全運転な八戒さんには珍しく、がたんと揺れた。
「あいたっ!」
次の瞬間、何故か突然あたしは尻餅をついていた。
「八戒さん、あんぜ」
口は止まり目は点、腰をさすった姿勢のまま固まった。
ハイテクノロジーを感じさせる機械の部屋。
同じく目を点にさせる特大に大きな黒い人と特大に大きな赤い人。
「は、じめまして・・・・」
一言だけ言わせてほしい。
またかっ!!!
もしもシリーズ
1
「はじめまして、君は・・・・ラーか?」
いち早く立ち直ったのは特大に大きな赤い人だ。
あたしが座り込んでいるものだから更に大きく見えるが、それをさっ引いても五十センチぐらい違うんじゃないだろうか。
うらやましい、それはともかく。
「らあ?」
ララア?
「いや、失礼。突然現れたのように見えたんだが」
「俺にもそう見えたんだが、あんたもか?女王」
「お前もか、海賊」
女王と海賊と呼び合うでっかい人たち。
な〜んか引っかかっるがこの二人の顔に見覚えはない。
黒髪のでっかい男の人は海賊と呼ばれ、燃えるような赤い髪の女の人は女王と呼ばれている。
本物の海賊、女王というにはこの場も彼らが着ている服もハイテクすぎしないだろうか?
体格に気圧されていたがよくよく見れば物凄い美形だ。
美形に見慣れつつある悲しい毎日だがこの二人はまたタイプの違うド迫力の美形だ。
「あたしもよ、ケリー」
ぼんやりと二人を見上げていたところにもうひとつの声が響いた。
「突然、生体反応が現れてびっくりしたわ」
「ぅわっ!!」
びっくりしたのはこちらも同じ。
突然テレビがつくように何もないところに画面が現れた。
そこに映し出されたのはまた文句なしの美女だった。
金髪碧眼の美女は少し困ったように画面上からこちらを見つめている。
「え?テレビ電話的な?」
「テレビ電話!また古い物を知ってるのね?もう何十世紀も前の遺物よ」
「ちょっと古いかもと思ったら何十世紀とまでっ!?」
なんてこった!
世界はいつの間にあたしを置いてそんなカッ飛んだ進化を遂げたのか。
いやいやいや、そんな訳あるかってゆーかなんてゆーか、
「そもそもここは何処?」
混乱ここに極まったあたしのポロリと漏れた言葉に海賊の人が肩を竦めた。
「ここは俺の船『パラス・アテナ』だ。分かって来た訳じゃなさそうだな」
船という事はまた大航海時代に飛ばされたのだろうか?
にしてもこんな劇画タッチの大きい人達がひとつなぎの大秘宝を巡る物語にいただろうか?
何かが引っかかる。
海賊、女王、パラス・アテナ?
なんだっけなんだっけなんだっけ?
「自己紹介が遅れたな」
首を傾げているところに頭の大分上の方から声が降ってきた。
女王の人は座りっぱなしだったあたしをひょいっと立たせ埃を落とす。
何この紳士!
「私の名前はジャスミン・クーアだ」
・・・・ぱーどん?
「俺はケリー・クーア」
ん?ん?ん?
「私はダイアナ・イレブンスよ。不思議なお嬢さん」
目に飛び込んで来たのはダイアナの裏で大画面に広がる真っ黒な空間、無数の星。
「・・・・、です。そちら風に言えば・。そろそろ三十路ですので、夜路死苦」
あぁ、海賊違い。
「ほう、なら私とほぼ同い年か!ミス・」
「てっきり金色狼たちと同じくらいかと思ったぜ!」
「失礼よ、ケリー。肉体や肌は成人女性のものだわ」
「・・・・肌。でいーです。がっかりするぐらいの人種の違いですネ」