「オレはお前さんの保護者としてだなあ、」

「うっさいわね!そもそも ねーちゃんってゆー本物の保護者がいるんだから!ガウリイは保護者でもなんでもないじゃない!」

「っ・・・・、そう、だな、」

「あ、・・・・・・・・」





とゆー少女漫画並みの気まずい沈黙が流れたのを見て、自分のいる弊害について考えた。


8






さん!お願いします!」

「これ以上は旅に支障が出る。あんたなら何とか出来るだろう?」





アメリアちゃんの懇願とゼルガディス君のツンデレ的にお願いにより絶賛喧嘩中の二人を仲裁する事になった。

そんな大した事が原因ではないのだ。

いつものように自由奔放に無茶するリナちゃんをいつものようにガウリイ君がいさめた時にリナちゃんが言い過ぎただけで。

それがまた人の名前使うもんだからこじれただけで。

これ何てゆー少女漫画?





「入っていい?」





みんなで気まずい空気の中、宿を取って、気まずい空気の中ご飯を食べて、そこそこいい時間。

私は一つの部屋の前に立った。

正直面倒くさい事この上ないが自分が付いていくと言ってこうなった以上手を打たない訳にはいかないだろう。

長い人生の中こんな甘酸っぱい事はなかったのでうまくやれる気がしないが、赤い糸切りのリナちゃんほどじゃないのでまあ何とかなるでしょう。

ノックの音を響かせて返事を待つ。





「・・・・どうぞ、」





いつもより幾分暗い声に肩を竦める。

本当にどこの少女漫画なんだろう。

ドアを開けて入り口に持たれながら親指で外を指差した。
 




「ちょっと付き合ってくれない?ガウリイ君」





アホ面下げた金髪青年の返事を待たず夜の帳が降りた町を歩き出した。










「えーっと、何の用なんだ? さん」

「ちょっとお手合わせ願おうかと」





町を越え人気のない少し開けた野原に出た。

ごそごそと手頃な長さの木の枝をガウリイ君に向けて放り投げた。





「リナちゃんの自称保護者、なんでしょう?」

「・・・・リナには、いらないって言われちまったけど、な」

「そうね。だから、」





ぎゅっと枝を握り締めて上段の構えを取る。

剣、苦手なんだけどなあ。





「私が審査してあげるわ」





伝説の光の剣の伝承者の実力や如何に?












「・・・・・・・・・・っ!」

「・・・・・・・・ごめん、大丈夫?」






結論から言うとガウリイ君はとっても強かった。

最初の一手こそ戸惑っていたものの二手目からは剣士の目だった。

マジになってもらわないと困るものの、ほぼこの世界最強の剣士に剣では流石に勝てない訳で。

そもそも剣なんて長い人生の中でもちょこっとしか使ったことがない。

精々何かの式典とか、こけおどしとか。

だって私、忍だもの。

基本、闇紛れて生きる、だもの。

そんなわけで途中で剣の長さの枝を諦めて真ん中で折ってクナイサイズにして。

それでも上忍のスピードにまでついてくるもんだからちょっと本気出して楽しくなってきちゃってオーラ垂れ流しちゃって、今に至る。





「息、出来る?」

「だい、じょうぶ、だ」





殺気はともかくオーラは駄目だったと思う。

万全な状態ならもしかしたら違ったかもしれないが相当やり合ってからのオーラはキツかったと思う。

気絶してもおかしくないのにガウリイ君はむせて膝を着くにとどまっている。

え?すごくない?ってゆーか楽しくなってオーラ垂れ流すとか本当に自重しろ私。

変態ピエロと同一かと思うも非常に凹む。






「・・・・こりゃ、ゼロスが嫌がるわけだな、」

「あ、アレの場合はもっとこう一発で滅するつもりでいくから」

「ま、まあ、ほどほどにな」





デコピンのジェスチャーをするとガウリイ君が変な顔をした。

やだな、魔族と人間を一緒にしないよ?





「全く敵わなかったな・・・・」

「十分よ?」

「いや、結局オレはリナの自称保護者でしかなかったから・・・・」





あ、面倒くさい。





「自称保護者じゃないとリナちゃんと一緒にいられないの?」





悪いけど、やっぱり私は恋愛事は苦手で、向いてないんだと思う。

そもそもこの長い人生の中で恋愛、したけっか?

そんな恋愛レベル底辺の私には荷が重い。

根気がないのよ私。 






「ガウリイ君。君、考えても無駄なんだから。リナちゃんと一緒にいたいの?いたくないの?どっち?」

「いや、オレ自称保護者で、」

「だから、保護者は私。じゃあガウリイ君は?」

「・・・・仲間、?」

「じゃあそんでいいじゃない」 

「・・・・・・そう、だな。でも、オレは・・・・」





まだうじうじしているガウリイ君を引っ張って立たせる。

やれやれ何て世話のやける子たちなんだろう。





「私は保護者として君にならリナちゃんを任せてもいいと思うわ。仲間じゃ物足りなくて、それ以上の間柄になりたいなら直接そこのリナちゃんにお願いして頂戴」

「ちょっ! ねーちゃん!!?」

「リナ!!?」

「お姉ちゃん疲れちゃったから後はよろしく。これで明日もグズグズしてたら二人ともお仕置きだから」

「ちょ!!? ねーちゃん!!」





二人にヒラヒラと手を振りながら歩く。

もうこれ以上は知らない。

途中からリナちゃんが来てたのは知ってたし二人が上手くいくかとかもうどうでもいい。

ただ久しぶりに楽しくなっちゃったこの感じをどうしてくれよう。





「誰が瘴気を撒き散らしてるのかと思ったら、 さんじゃないですか」

「ゼロス・・・・」





体の疼きをどう治めようかと町の外へ出たところで本当に残念なオカッパ魔族と出会った。





、さん・・・・?」

「あんた、ほんっとに、タイミングが悪い可哀想な子ね・・・・?」





久しぶりの感覚に体が高揚する。

口の端がゆっくりと上がるのを感じた。
  




「えっと、僕、 さんの笑顔初めてみました、よ?」

「そう」

「あれ?待ってください?今、何しました?まさか結界張りました?あれ? さん?」

「ねえ、ゼロス・・・・?」





言い忘れていたが、上忍時代、ハンター時代、魔法時代や、賞金首になった時など、その他いろいろな世界でいろいろな噂や二つ名があった。

その中の一つに、





「体が疼いて堪らないの。付き合って頂戴?」





死の微笑とかいうのがあった事を明記しておく。

その名の通り、見た者は死ぬと言われた都市伝説。

その信憑性は推して知るべし。

次の日、リナちゃんとガウリイ君は見てるこっちが恥ずかしいようなもだもだ感はあるものの一応仲直りを果たした。





「最近ゼロスを見ないな」

「いーんじゃない?元々神出鬼没なんだし、そのうちまた胡散臭い顔してくるわよ」

「それもそうですね!」

「・・・・・・・・ さん、手加減した、よな?」





そんな暢気な会話の横で妙に勘のいいガウリイ君が私に耳打ちをしてきた。





「大丈夫、あの人たち丈夫だから」





ちょっとサンドバックにしたような気はするけど大丈夫。

魔族の丈夫さを信じてる。











いろいろやってる夢主といえども剣ではガウリイには敵わないです。
そもそも剣術とか性に合わない。先手必勝。暗躍万歳。
そんなわけでガウリナの回でした。
そのうちゼルアメの回もやりたい。
ゼロス安定の不憫さです。
ここまで来るとひどいと思う。
ごめん。

 

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