そんなこんなでやってきました、ドラゴンズピーク!


ガウリイ君曰く、でっかいトカゲのおじ様のお出迎えである。





「お久し振りですねぇ、ミルガズィアさん」

「久しいな、ゼロス」

「知り合い、なの?」

「こやつは千年前の大戦でたった一人で竜族を壊滅に追い込んだ」

「なっ!!」

「まさか、」

「そんなに!?」

「じゃあ、」

「「「「それをタコ殴りする (姉ちゃん)さんって一体・・・・?」」」」



可愛い妹とその愉快な仲間たちの驚愕の視線は軽くスルー。



「だから、ずぅぅぅぅっと、言ってるじゃないですか。 さん、絶対人間じゃないですよって、」



何度躾ても懲りないおかっぱにはチャクラを込めた爪先で、ぐりゅりっと足を踏んでやった。





11





聖地巡礼と称して各地を回った時から二回目のドラゴン峰。

前回は遠目から竜たちを観察し、時空の歪みがある場所を見学し、ああここに異界黙示録ってやつがあるわけですねふむふむ、なんて完全なるファン根性丸出しでこっそり楽しんだのだが、まさかしっかり玄関から客人として入れるとは思わなかった。

これも日頃の行いの賜物た。

感無量だと言える。

若干涙目のたった一人でドラゴン族を壊滅に追い込んだ魔族様を無視し皆と共に黙示録のある時空の歪みに向かう。

ちょびっとだけゼルガディスくんがごねたりもしたが、その他特に問題なく最長老であるナイスミドルに連れられて、リナちゃんが岩の中に吸い込まれていった。

その際、



「とかげのオッサン!!頼むから気をつけてくれよ!!」

「リナに何かあれば俺たちには止める自信がない。覚悟して連れていくことだ」

「リナさんに何かあったらこの辺りなんてペンペン草も生えないどころか、ほんとーに、竜族存続の危機ですからね!!気をつけてくださいよ!!」



と、何故か妹の友人たちが釘を刺していた。

少しの間の旅仲間だが、よく分かっていただけているようで何よりだ。

リナちゃんの後ろ姿を見送り、

一息つく。

問題はここからだ。

街では案の定、美少年の擬態したショタじじいに遭遇した。

胡散臭い出会いを妨害する事も出来たが耐えてスルー。

溢れ出そうな殺気を押さえるのに苦労した。

被害者は言わずもがなおかっぱ魔族だ。



「あの、 さん?」



岩壁に背中を預け周囲を見渡す。

ぽこり、ぽこりと気配が産まれているのが分かる。

大きめ二つと小さめがいくつか。



「あの?」



高位魔族が集まるこの場所で、私は何をするべきか。

久しぶりに迷っていた。

原作通りに進める事を。

ガウリイ君が浚われる事。

皆が傷付いていく事。

そして何よりリナちゃんの涙は見たくない。



「・・・・あの〜・・・・・・」



気配がジリジリと近付いてくる。

戦闘が近い。



さん?」



しかし、この山場を乗り越えなければファン待望のちゅーしてくるくるはあり得ない。

これは由々しき問題である。



さん!!」

「五月蝿いわね」

「ぴぃぃぃいいいいい!!!アイアンクローはやめてください!!潰れます!潰れます!中身出ますぅぅぅううう!!!」



本当に五月蝿い。

顔をしかめて手を離すと紫の何もない空間の下にべちゃりと落ちた。 

そう、何もない、紫の空間に。



「・・・・あの、今の現状、分かってます?」

「分かってるわ」



ここはいわゆる精神世界と言われる場所。

ただし、私は一歩もあの岩場から動いていない。

つまり切り取られたのだ。

この目の前のとんがり魔族に。



「この私に喧嘩を売るの?」



買うわよ、言い値で。

にっこりと笑うと条件反射の様に震え上がるおかっぱ。

これも仮上司のショタじじいの差し金か。

ため息をついてもう一度壁に背中を預けようとしたが、壁がなくなっているのに気付き諦めてその場に腰をおろした。



「あ、の? さん?」

「何?」

「暴れたりしないんですか?」

「してほしいの?」



お望みなら内側から精神世界を食い破ってあげてもいいが。

ちらりと視線を送ると高速で首をふる獣神官。

チャレンジ精神のない魔族だ。

それを放置し四次元鞄からレジャーマットやブランケットその他くつろぎグッズを取り出し本を読む。

娯楽本ではなく研究ノートだ。

この世界に居られる間にやって起きたいことがいくつかあるのだ。



「・・・・ さんは、何を考えているんですか?」



珍しくシリアス顔をしたおかっぱがこちらをじっと見据えた。

糸目から紫の瞳がちらりと見える。



さんならここから出る事も出来るはずですよね?フィブリゾ様に気付かない訳もない。そもそもわざと僕に捕まった。そうでしょう?」



私の返事を待たず言いつのる。



「何を企んでいるんです?」



私は答えない。



「答えてください。貴女は何を考えているんです?」



目を閉じて、ゆっくりとノートを撫でた。

脆くなり始めた紙の感触が哀愁をさそう。



「私はね、」



悩んでいた。

その先を選ぶ事を。

悩んでいた。

それは全て愛する者たちの為。

何もかも手を出す事が、人を幸せにする訳ではない。

大事に大事に囲う事は、彼女の為にならない。

それを知っているから私は旅に出たのだし、極力手出しをしなかった。

私の愛する妹は、私が居なくても生きていける。 



「愛しい我が子を谷底に突き落とす獅子を信条にしてるの」



人間生きてく為には試練が必要なのだ。

お望みなら今ここで不良中年とやりあう前にしごいてあげてもいいけど?と、愛ある一言を付け加えると、



「〜〜〜〜〜っ!! さんのいぢわるっ!!」



お決まりの台詞を残して消えたのだった。







皆さんは何て呼びます?ネクストラストのキスシーン(笑)
精神世界については完全なる妄想です。
紫の精神世界て(笑)目がちかちかするわ!
後、いつぞやいただいたコメントですが、この作品に関しては、原作者様の書き方に習った箇所が数箇所ございます。(いぢわる、いぢめ、ってゆーか、など)
ご了承ください。

inserted by FC2 system