姉ちゃん!正直に答えてちよーだい!!」

「嘘や誤魔化し、それは即ち悪なのですっ!!」



ドラコン峰を目指す旅路でのある宿屋の一室。


 女子三人部屋になったある日の夜の事。


さあ寝ようかという段階になったこの時間。


 鬼気迫るリナちゃんに小首を傾げた。

その隣では似たような表情のアメリアちゃん。


 一体何が愛妹たちをこんなに苦しめているというのだろう?



 「ゼロスと、その、つつつつつつつ付き合ってるのっ!!?」

 「ごめんなさいね、リナちゃん私生ゴミ駆除を思い出したわ」



 血相をかえた愛妹とその友だちに全力で止められた。





10





「アアアアアア、アメリアが変な事言うから!!」

「リリリリリリ、リナさんだって、怪しいって言ってたじゃないですかぁ!」



そもそも何がどうしてそんな結論に至ったのか。

目を細める私に本気で怯える二人。

カオスだ。



 「それで?どうしてそんな事思い付いたの?」



 頬に手を当て、ふうっとため息をつく。



 「それは、その・・・・」

 「えええっっっと、です、ね?」



チラチラとお互いを見ながら、あんた言いなさいよ、嫌ですようみたいなやり取りが繰り広げられる。

可愛い。

しかし、それはそれ、これはこれだ。



 「さっさと言いなさい?」



にこっと笑った私にひぃぃぃいいい!!と叫び声が上がった。








  
 「だって、最近 姉ちゃんずっとご機嫌だったでしょ?」

 「特にゼロスさんと一緒にいる時!」

 「しかも、夜ゼロスと一緒にどっか行ってるってゆーから、」

 「それで、もしゼロスさんの毒牙にかかっているなら何としても助けないと!と、思いまして・・・・」



なるほど。

米神を揉みながら二人の話を聞き終わる。

恋愛脳って怖い。



 「で、結局のこと、どーなの姉ちゃん!?」



枕を抱き締めびくびくしながらこちらを睨み付けるリナちゃん。

物凄く可愛い。

よしよしと頭を撫でると、誤魔化さないでよ!と赤い顔で吠えるのもまた良し。



 「リナちゃんって盗賊いぢめ、好きでしょう?」

 「へ?好き、だけど?」

 「まあ、そういうことね」

 「・・・・・・・・まぢで?」



ひくひくひくっと頬を引きつらせるリナちゃんの頭をまた撫で、お茶でも入れるかと立ち上がる。



 「え?え?え?それってつまり、どーゆー意味ですか?」

 「・・・・つまり、 姉ちゃんは盗賊いぢめならぬ、ゼロスいぢめをしてた、と?」



 香茶を入れると部屋にふんわりといい香りがする。



 「いじめじゃないわ、修行よ。多分」

 「・・・・あんなんでもゼロス、魔族なのよ?しかも高位の」

 「知ってるわ」



はいっと香茶の入ったカップを手渡すとありがと、と小さく呟くリナちゃんに萌える。



 「えっと、つまり、ゼロスさん相手に修行してたって事ですか?」



こてん、と小首を傾げた王女様にもカップを手渡すとありがとうございます!と元気な返事が返ってきた。

元気でよろしい。



 「逆よ」

 「え?」

 「つまりね、アメリア」



 何だか良くわかってないアメリアちゃんにリナちゃんが遠い目をしながら語りかけた。



 「 姉ちゃんは暇潰しにゼロスいぢめ、つまり、ゼロスに修行をつけてたって言ってるのよ」

 「・・・・えっと、ゼロスさんに、修行を?・・・・ゼロスさんと、修行じゃなくて?」

 「・・・・暇潰しにね・・・・」



遠い目をしだした二人を置いておいてゆっくりと香茶を飲む。

カフェインが入ってないといいけど。

私はカフェインごときで眠れなくなるような可愛い体はしていないが、私の真似して毒に慣らしたリナちゃんはともかくアメリアちゃんは眠れなくなってしまうだろうか?

アメリアちゃんも王族なんだからその辺の教育はしてあるんだろうか?

以前旅の途中でチラリと見た殿下を思うとしてなさそうだが、意外とキナ臭い王国なのでなくはないか。



 「でもでも!毎夜行われる激しい修行!そこで芽生える愛!みたいなのってないんですか?」

 「虫けらに感じる愛はないわねぇ」



懲りない王女が撃沈するのを横目で見る。

意外と恋愛物も好きなのかしら?

よしよしと頭を撫でてあげる。



 「 姉ちゃんが規格外なのは知ってたけど、まさかそこまでとは・・・・」

 「ルナさんでも出来ると思うけど」

 「ルナ姉ちゃんは別よ!!!」



ルナさんは出来る。

てゆーかヤる。

私より実は過保護で妹大好きなルナさんは、リナちゃんが色んな意味でぼっこぼこになるくらい鍛えていたので、魔族ごとき手玉に取らずしてどうする、とか言う。

間違いなく。

ちなみに私もルナさんの扱きは受けている。

私がなかなかハードだった、と思うほどなのでその中身は察してほしい。



 「でもでも、どーやったらそんな風にゼロスさんをどつき回せるんですか?」

 「そーよ、何かコツとかあるの?」

 「コツ、ねぇ」



香茶を飲んでほっこりだ。

可愛い二人のおねだりに思案しながらカップを置いた。



 「まずはこの手に、」

 「うんうん」

 「ふんふん」

 「愛と勇気と希望と血と汗と涙で培った気力と生命力をみなぎらせます」

 「おお!!」

 「ちょ、 姉ちゃん?」



 二者それぞれのリアクションを見ながら、さくっと続ける。



 「そして同様にその瞳にもいろいろたぎらせます。そして、」



つかつかと何もない壁の辺りに進み、二本の指で空間を切り裂き、何もない空間にその手を突っ込む。



 「えっ!!?」

 「なっ!!?」



ぐわしっと手応えのある何かを掴む。

ぴぎゃあ!!と可哀想な悲鳴が聞こえた。



 「引っ張り出したら出来上がり」

 「「ゼロス(さん)!!」」



 一本釣りの様に引きずり出したのは今話題の魔族殿だ。

 黒いとんがりコーンのとんがり部分を掴んで持ち上げたと思ったが掴んでいるのは襟首だった。

どこがどうなって人形をとっているのかいつか検証してみようと思う。



 「女性の部屋を覗き見なんて変質者のする事よ」



やだ、変態。と全力で侮蔑の目で見てやったが当の本人はそれどころではないらしい。

完全に固まっている。

人形を取れているのが奇跡のような酷い顔だ。



 「・・・・・・・・あ、の、 さん?」

 「なぁに?」

 「・・・・・・・・僕、今、精神世界にいました、よね?」

 「いたわね」

 「・・・・・・・・僕、今、引きずり出されました?」

 「出したわね」

 「っっっっっっ!!!!どこに、精神世界に干渉どころか直接交渉出来る人間がいるんです!!!!」

 「ここに」



そーゆーことを言ってるんじゃありません!!!と地団駄を踏む高位魔族。

相変わらず芸が細かいな三角錐。



 「と、いう訳で愛と勇気と希望と血と汗と涙と、後はそうね、時間と人生と諸々の死線をくぐり抜け、世界を駆けまわるとこんな芸当ができるようになります」

 「なりませんよ!!!?普通!!!!」



むきぃぃぃいいいい!!と叫ぶ黒いブツ。

キャラが壊れているが、いいんだろうかその辺。



 「そもそも無詠唱で、というか全く魔力の気配なく精神世界に直接干渉して魔族を引っ張り出すって!!一体どんな体の構造してるんですか!?あれですね?やっぱり人間じゃないんすね!!?」

 「五月蝿い」



きゅっと絞めると静かになりました。



 「ええええっと・・・・ 姉ちゃん・・・・?」

 「なぁに?」

 「・・・・・・・・それ、どーすんの?」

 「外に捨ててくるわ」

 「・・・・・・・・あ、うん、いってらっしゃい」



 懲りない生ゴミを外に捨て、部屋に戻ると何故か二人が遠い目をしていたのでよしよしと頭を撫でて就寝となったのだった。





 次の日。



 「 さん!!師匠と呼ばせてください!!」

 「駄目」

 「ガーン!!」

 「 姉ちゃんが珍しく冗談なんていうから熱血娘が本気にしちゃったんじゃない」

 「冗談なんて言ってないわ」

 「何がどこまで本気が分かんないのよ!!」









姉さん、基本的に嘘はつきません。
そんな誓約でもしてるんですかね?←おい。
だんだん、魔族殿がとってもひどい扱いに・・・・いや、前からか?
どの段階でみんながゼロスが魔族だって知ってたかが曖昧です。
もしかしてミズガディアさんと会った時だっけ?と思いながらミズガディアさんと会ったときに他にやりたいことがある為、みんな知ってます←ご都合。
大したことがしたいわけじゃないんですけどね(笑)
今更ですがアメリアはどうしてもリナさん呼びじゃないと嫌なのでアニメ寄りに。
いや、基本私アニメ寄りですね(笑)
これからシリアス、の予定です。
一応ね。
ネクストで完結の予定です。
一応ね!(笑)

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